世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

【読了】J・L・フロマートカ「なぜ私は生きているか」

今年133冊目読了。チェコスロバキアの神学者として、第一次大戦、第二次大戦を経て共産主義国となった祖国への強い思いを抱き続けた筆者が、その半生を振り返る一冊。日本人には馴染みの薄い神学であるが、これについては「神学が取り扱うのは、人間のカテゴ…

【読了】ケネス・J・ガーゲン、メアリー・ガーゲン「現実はいつも対話から生まれる」

今年132冊目読了。スワースモア大学心理学教授にしてタオス・インスティテュート所長と、ペンシルベニア州立大学心理学及び女性学教授の著者が、社会構成主義について解説する一冊。主張は概ね理解できるが、いかんせん、直訳っぽいのか何なのか、表現が迂遠…

【読了】蓑田胸喜「国防哲学」

今年131冊目読了。昭和16年、太平洋戦争突入前夜の状況において、右翼思想家である著者が激しく持論を展開する一冊。とにかく、自分と意見を異にするものはとことん批判し、日本と日本人を極端に賛美しまくる中身で、最初は唖然とし、読み進めると頭が痛くな…

【読了】井筒俊彦「意識と本質」

今年130冊目読了。慶應義塾大学名誉教授を勤めた東洋哲学の思想家である筆者が、精神的東洋の深淵に迫った一冊。とにかく思索が深くて、なかなか理解しがたい。ただ、噛み砕いていくと、その深さに驚嘆しきりだ。そもそも、本質というものの認知について「己…

【読了】池田徳眞「プロパガンダ戦史」

今年129冊目読了。第二次大戦中に外務省ラジオ室で国外放送の傍受に従事していた筆者が、各国のプロパガンダからその本質に迫る一冊。人間心理を深く衝く必要がある、というプロパガンダの特性を緻密に分析し、掘り下げる記述はとても興味深く、自分の浅知恵…

【読了】ウォルフガング・ロッツ「スパイのためのハンドブック」

今年128冊目読了。イスラエル情報機関モサドの星と呼ばれた元・敏腕スパイが、波乱の体験をもとに「ハウツー・スパイ」を書き記した一冊。幾つか、スパイ適性を判定する質問リストがあり、面白い。当然の事ながら、全く適性のない自分でも(苦笑)、人間心理…

【読了】会田雄次「アーロン収容所」

今年127冊目読了。京都大学教授の筆者が、ビルマで終戦を迎えてイギリス軍の捕虜となったことで痛感した西欧ヒューマニズムの限界を書き表した一冊。〈お薦め対象〉 ヒューマニズムを考えるすべての人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価…

【読了】木村元彦「終わらぬ民族浄化 セルビア・モンテネグロ」

今年126冊目読了。ノンフィクション・ライターの筆者が、1999年のNATOによるユーゴスラビア空爆後の6年間、コソボ紛争が解決どころかもっと酷い人権侵害の嵐に曝されている実態を浮き彫りにする一冊。報道が「あたかも解決したかのように」ニュースで述べる…

【プロフェッショナルの魂。】

移転は終わっても、動き始めてみると、社員からあれこれ使い勝手についての要望が上がる。かなり事前に想定してはいたものの、やはり図面の二次元で考えるのと実際の三次元とは乖離が出るわけで。特にバックヤードは、様々な意見が出て、修正を迫られる。む…

【読了】ショウペンハウエル「読書について 他二篇」

今年125冊目読了。17世紀のドイツ哲学者の巨匠が、読書、思索、文章について考えを書き表した一冊。まず、考えるということについて「いかに多量にかき集めても、自分で考え抜いた知識でなければその価値は疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考え抜い…

【読了】坂東眞佐子「死国」

今年124冊目読了。建築を学んだ筆者が放つ、大人向け伝奇ロマン。生死、愛憎、この世とあの世。往来する世界観は、ちと受け入れにくいが、読んでいくと引き込まれ、つい読み進める。生への執着、死への嫌悪、喪ったものへの生を賭しての拘泥。そういったのも…

【読了】渡辺洋二「双発戦闘機 屠龍」

今年123冊目読了。航空史の研究家である筆者が、第二次大戦下で開発され、数奇な運命を辿った機種をめぐる開発者、技術者、操縦士、陸軍幹部らの人間模様を描き出す一冊。もともと、自身が軍事方面にもある程度の興味があることを割り引いても、これは面白い…

【読了】三島由紀夫「金閣寺」

今年122冊目読了。昭和の名作家が、国宝・金閣寺が寺の青年僧によって放火・焼失するという事件を、告白体の名文によって小説化した一冊。美と屈折、死と生、執着と諦念、羨望と侮蔑。人間の中に渦巻く数々の情念を、事件を起こした青年僧の内面から描き出す…

【読了】本谷有希子「異類婚姻譚」

今年121冊目読了。小説家にして劇作家の著者が、「旦那の顔が異常に歪む」という事を通じて人間の関係性を掘り下げる一冊。俗説的に「夫婦はだんだん似てくる」と言われる。そこに、敢えて挑戦するような、非常に面白い切り口の作品。旦那の気の緩みと、顔の…

【読了】本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ。」

今年120冊目読了。小説家にして劇作家の著者が、自己愛と欲望、屈折した感情が渦巻く三人の長女・長男・次女の交錯と、そのおどろおどろしい関係のねじれを描く小説。とにかく、描写が巧みで、恐ろしいまでに情景が思い浮かぶ。それに支えられたストーリーの…

【読了】又吉直樹「火花」

今年119冊目読了。芸人の著者が、漫才師が師匠と仰ぐ人を見つけてから様々な世界を知り、悩みながら成長していく小説。…と書くと、いい話っぽいが、実際はとんでもない。人間の自己顕示欲とエゴ、それに対する嫌悪感、そして他者との掴みきれない距離感。こ…

【読了】酒井邦嘉「脳を創る読書」

今年118冊目読了。東大大学院総合文化研究科教授の著者が、「なぜ、紙の本が人にとって必要なのか」を書き記した一冊。正直、タイトルもサブタイトルも今一つ中身とマッチングしていないなぁ、と感じる。タイトルの「脳を創る読書」については、「入力された…

【読書の記録と、本の再読。】

齋藤孝「読書力」を8年ぶりに再読した。実に面白い発見が多かったので、これはお勧めだ。●8年の歳月は、人を変える。 8年前は「読みたい本がこんなに増えると年間80冊でも3年かかる」なんて思っていたが、幸いにして、年間100冊は読めるようになった。これは…

【読了】齋藤孝「読書力」

今年117冊目読了。明治大学文学部の筆者が、本を読むことの意味と、読む力の鍛え方書き記した一冊。〈お薦め対象〉 本をよく読む人はもちろん、むしろ読書と縁遠くなっている人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは…

【読了】勝間和代「読書進化論」

今年116冊目読了。経済評論家、公認会計士の筆者が、「人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」について考察する一冊。端的に言って、駄本。第一章「人を進化させる読書がある」は、非常に共感しながら読めた。しかし、第二章以下はダメだ。ひたす…

【読了】佐藤優「僕ならこう読む」

今年115冊目読了。元外交官にして作家、超読書家の筆者が、今と自分がわかる12冊の本の解釈を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 本を読む、または読もうとするすべての人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは3つ。 『…

【読了】勝間和代「断る力」

今年113冊目読了。経済評論家として人気を博する筆者が、自分の軸を持ち、生産的な提言や好循環をつくる変革を薦める一冊。〈お薦め対象〉 本当の自分らしい人生を生きたい人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは3…

【読了】ヤマザキマリ「仕事にしばられない生き方」

今年114冊目読了。漫画家にして、世界各国で様々な仕事をしながら暮らした経験のある筆者が、自らの経験をもとに生きるうえでの原則を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 自分の人生を生きられていない、と感じるすべての人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈…

【読了】原武史「昭和天皇」

今年112冊目読了。日経新聞記者を経て、明治学院大学教授となった筆者が、昭和天皇が祈り続けたことは何だったのかを描き出す一冊。令和の時代になって、今日(10月22日)は即位礼正殿の儀。これをはじめとして、天皇家には様々な神事があるが、その中身と明…

【読了】佐久間賢「交渉力入門」

今年111冊目読了。中央大学客員研究員にして、国際リーダー力研究所代表の筆者が、交渉を科学的に分析し、成功に導く戦略、ノウハウを解説した一冊。交渉とは「人と人との利害の対立する関係の中から、対話により、あるい成果を生み出すプロセスの全体」と定…

【読了】ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス「ライフデザイン」

今年108冊目読了。スタンフォード大学デザイン・プログラムのエグゼクティブディレクターと講師であり、ライフデザイン・ラボの共同設立者である著者が、スタンフォード式の最高の人生設計を提唱する一冊。デザイン思考に立ちながら、機械工学や技術の知識を…

【読了】大村はま「教えるということ」

今年110冊目読了。50年に及んで一教師として教育実践の場に立ち、退職後も新しいテーマを研究、発表し続けた筆者が、本当に教えるとはどういうことかをエピソードを通じて語った一冊。別に教師ではないし、教職を今後目指すつもりもないが、親として、そして…

【読了】浜矩子「グローバル恐慌」

今年109冊目読了。三菱総合研究所を経て同志社大学大学院ビジネス研究科教授となった筆者が、金融暴走時代の果てに何が起こっているのか、を紐解いて解説する一冊。正直、経済については理解が極端に弱い自分にとっては、リーマンショックとそこに至る「地獄…

【読了】牧久「昭和解体」

今年107冊目読了。日経新聞代表取締役副社長、テレビ大阪会長を歴任したジャーナリストである筆者が、国鉄分割・民営化30年目にして、その当時の舞台裏を生々しく描き出した一冊。この系列の本は何冊も読んでいるのだが、「多面的な検証」という意味では、特…

竹内洋「教養主義の没落」

今年106冊目読了。京都大学大学院教育学研究科教授の筆者が、変わりゆくエリート学生文化を読み解いた一冊。これは、意外ながら面白い切り口。「近代日本の教養主義は、西欧文化の取得であり、日本人にとって西欧文化は伝統的身分文化ではないから、改装や地…