世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】長谷川ヨシテル「キテレツ城あるき」

今年36冊目読了。歴史ナビゲーター・歴史作家の筆者が、ユニークな城の特徴をまとめた一冊。


軽妙な筆致で、何気なく深い知識が入ってくるので、このシリーズは楽しく読める。城好きならもちろんのこと、歴史好きが『城好き』に目覚める助けになるかもしれない。


個別の説明はかなり深いものがあるのだが、主に気になったところを挙げるだけでも「洲本城天守は1928年に完成。1910年に岐阜城に模擬天守が完成しているが、1943年に焼失してしまったため、現存の再建天守では最古」「大和郡山城の石垣には石仏や石塔などの転用石が多い。罰当たりのような工事が行われたのは『豊臣家の威光を示すため』と『大和(奈良県)の石不足』によるもの」「徳島城は1586年築城。阿波踊り徳島城完成のお祝いとして『城下で好きに踊ってよい』と蜂須賀家政が御触れを出したことに始まるとも言われる」「江戸城は、戊辰戦争の際に新政府軍に明け渡されて『東京城(とうけいじょう)』と改名。翌1869年に明治天皇が東京に移り『皇城(こうじょう)』、後に『宮城(きゅうじょう)』となり、戦後に『皇居』と改称された」「安土城の謎は、誰が焼失させたからわかっていないことと、天守の姿がわからないこと」「難攻不落と言われる岐阜城だが、実は七回落城している」「伏見城は三つある。秀吉による『指月伏見城』『小幡山伏見城』と『徳川伏見城』」と、これだけ興味深い。


また、城だけでなく「大名には、<城主格>という『お城は持ってはいけないが、お城を持ってもよい大名<城主>と同じランク』があった」「大名とは一万石以上の石高のある江戸幕府の家臣だが、お米が取れない松前藩の石高はなんとゼロ!全国で唯一の『無石』の藩。ただ、アイヌとの交易の独占権を幕府から認められていたこともあり、蝦夷の水産資源と森林資源で大いに栄えた」なんて豆知識も楽しい。


なにげになるほどなぁと思ったのは「お城や歴史に関して、言っている数字と合計が合わないパターンはあるある。『日本三名城』は姫路城、熊本城、名古屋城大坂城。『賤ヶ岳七本槍』も当初は九人もカウントされているし、最上義光を支えた『最上四天王』は合計六人」のあたり。結構いい加減なんだな…


ライトな感覚で深いことを伝えるというのはそれなり技量が必要なので、筆者の意外な?レベルの高さに感心した。