世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】河合香織「老化は治療できるか」

今年37冊目読了。ノンフィクション作家の筆者が、アンチエイジング研究の最前線を追う一冊。


面白いテーマではあるのだが、まだまだ科学的には研究途上なので、これといった結論がないのがもどかしい。しかし、こうした考察は大事だろうな。


なぜ死が恐ろしいのか。筆者の「人は必ず死ぬことは理解していても、自分自身に限ってはその真実を簡単には受け入れられない。そこには多くの人と関わりながら生きてきた過去の時間や、この先に描いている未来があるからだ」は、正鵠を射ているように感じる。


寿命についてなるほどと思ったのは「生物は、それぞれ進化のなかで最適な生存戦略を選択してきた。人類の最大寿命はなぜ120歳なのかという、その理由もまったくわかっていない」「人間は知能の発達によって、衛生観念が生じたり、天敵を駆逐したりして、本来の寿命を大幅に延長してしまっている。遺伝子レベルではそのような状況に適応していないので、色々な問題が生じる」のあたり。


また、老化についての「老化が緩やかな坂で進むのではなく、階段のようにある時点でガクッと進むのは、老化が遺伝的にプログラムされているから。生物はみんなそうで、そうしないと種が発展していけない」「老化防止の最大の難関の一つは脳。取り替えが限りなく不可能に近い臓器であるため、その老化をいかに防ぐかは老化研究の最大のテーマ」という言及も、なかなか興味深く読めた。


老化や寿命への対策?として挙げられている「睡眠は加齢とも関係している。不十分で良くない睡眠を続けていると加齢関連疾患が加速する」「光を調節して体内時計を整えることは、老化をコントロールすることにつながる」「社会的つながりは、最大寿命にも健康寿命にも関わる」「脳の老化を防ぎ、幸せな老後を過ごすための基本は、結局『運動』」「趣味や好奇心が脳の健康を保つために必要なのは、脳の可塑性。可塑性とは変化する力のことで、脳は何歳からでも変化に対応する力が備わっている」「脳は使えば使うほど伸びるので、『年を取ったから自分にはできない』と思う必要はまったくなく、脳科学的にも間違い。英会話でも勉強でも必ずできるようになる。それが結局は脳を健康に保ち、幸せになる秘訣」のあたりの指摘は、非常に体感としても納得感がある。


人生100年時代と言われていても、やはり健康寿命が大事。そもそも、生きるとは何のためなのか?ということを含めて、考えるきっかけにはよい一冊と感じた