世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】野間俊克「将棋400年史」

今年90冊目読了。現役指導棋士六段の筆者が、徳川幕府時代の名人・大橋宗桂から藤井聡太までの系譜を紐解く一冊。


さらりと将棋史を押さえられる一冊。全く趣味の本だが、新書らしくライトで読みやすかった。


将棋の起源がチャトランガであることは知っていたが、「将棋のルーツはインドが発祥の地とされている。チャトランガと呼ばれるものがその原型で、『チャトル』は『四つ』、『アンガ』は『組』『部分』の意味。チャトランガとは『四つの組(部分)』ということになる。」「古代インドの軍が、象、馬、戦車、歩兵の四隊だったので、それを模倣したゲームだろう。四人制で競技されたチャトランガには、これに王を加えた5種類の駒があった」と深掘りされると、さらにその面白さが増す。凄いなぁ。


徳川幕府と将棋の関係が「徳川家康囲碁、将棋をたしなんでいたのは有名で、徳川幕府は慶長17年(1612)2月、『碁打ち衆、将棋指し衆』八人に俸禄を与えた。ただし、わずかな施しで、それだけで生計をまかなえるほどではなく、技能奨励金のようなものだろう。しかし、将棋を指して俸禄を与えられるのは歴史上初めてのことで、将棋指しの社会的な地位を、ぐんと高める画期的な出来事だった。以後、将棋は民衆の遊びから、幕府公認の芸事として認められるようになった」「将棋の指南役の大きな仕事は、将軍が観戦する前で芸事を披露すること。これが後々まで伝わる『御城将棋』の始まりで、一年に一度、江戸城の御黒書院で対局が行われた。御城将棋が開かれる日が、11月17日と決められたのは八代将軍吉宗のとき。日本将棋連盟は昭和50年(1975)に11月17日を『将棋の日』と定めるようになった」と、今の将棋の日として息づいているのも面白い。


名人家は大橋家と伊藤家があり、今も駒の並べ方の名称となっているほどだが、「伊藤家は血縁関係よりも、実力主義を優先。才能のある者は伊藤家に集まることになり、優秀な弟子たちが競い合い、技術の進歩につながっていった」というのは知らなかった。これは今にもつながる話だな。


将棋と新聞の関係についての「江戸時代は幕府から俸禄を与えられて保護されてきた将棋家。ところが、幕府が崩壊してからは経済的な基盤を失っていた。それにとって変わる大事な後ろ盾。以来、現在に至るまで、将棋界は新聞社に支えてもらっている」「新聞によって全国の人々が将棋を楽しむ機会が増えたことは画期的な出来事。プロ棋士との接触はその地方の限られた人しか恩恵をこうむることができなかったが、新聞の活字によって棋士への親しみも湧き、人気面でも大きな効果を図ることとなった」という言及はなかなか興味深い。


余談だが「今も昔も、権力を盾に横暴な振る舞いを起こすことは、他者の反感を買う」は、プーチンなどに聞かせてやりたいフレーズだ…