世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】佐藤優「僕ならこう読む」

今年115冊目読了。元外交官にして作家、超読書家の筆者が、今と自分がわかる12冊の本の解釈を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
本を読む、または読もうとするすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『世の中はどう動きやすいか?』には「思考が硬直化したとき、暴力と狂気の世界はすぐこそこまできている。私たちの生活は、生活至上主義、合理主義、個人主義を基本としながらも、ときにそれを超えたところで大きな価値が生まれることがある。上からつくられた価値やスローガンに気をつけないと、思いもしない現実に突き当たる」。
『人の世の原則は何か?』には「宗教や文化、芸術というものは、他者と向き合うための場とテーマを提供してくれる。異質な者同士がときにぶつかり合いながらもコミュニケーションをとり、関係を築きながら互いに成長していく。情報を持つということは、いつの時代でも大きな力になる」。
『自分は、人生と世の中にどう向き合うべきか?』には「内なる悪を見つめ、それとどう向き合い制御するか、から始めることが最も健全。相手、特に組織を見極めるには、何を評価して何をタブーとするのかを押さえる。自我の成熟には、自己を突き放して客観的に見る目が何としても必要」。

本好きの端くれとしては、「読んでも意味のない難しい本と読む価値がある難しい本を仕分けする能力を身につけるには、優れた小説を読むことが大切」というのはズボッと抜けている部分であり、心に刺さる。

そして、「相手を認め、受け入れる間口の広さがコミュニケーション力の基本」「自己犠牲に基づく善なるものにこそ、人を動かす力が眠っている」という大きな話から「大きいお金を簡単に稼ごうとしないこと、欲をかかないことが人生の落とし穴にハマらない一番のポイント」「正解を探すのではなく、正解にしてしまう」など、簡単なように見える真実を貫く力には感嘆しきり。

本当にキツいのは「虚栄心や見栄とどう向き合い、その力を向上心のほうにうまく転化できるか」「真の自己愛は自己から離れるところにある。エゴから離れ、自分に対するとらわれから自由になること。そして目線を他者に向けること」という言及。でも、ここまで考えて生きてこそ…と、思う。

勿論、本書は「読み方」の本。でも、こういう優れた本は、一読をお勧めしたいし、ここに挙がって未読の本は、絶対に読みたい。これが、読書家の端くれの楽しみ。

そして。この本の本質はここにあり、と思うフレーズだけでも共有したい。「何にも拠らず自分を見つめる目を持つこと、自己省察の鋭利な刃を常に自分に向けること。その力が唯一の救いであり、本当の強さを持った自己をつくる唯一の」…これを読むために、この本があった。そう、思う。