世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】星渉、前野隆司「99.9%は幸せの素人」

今年183冊目読了。ビジネスコンサルタントと、慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科教授の筆者が、科学的な理解を通じて幸せになることを提唱する一冊。


前野隆司教授の本は好きで、元々読みたくて、図書館でずっと予約待ちしてた。これは、さらりと読めるのに充実の中身。いやホントに読む価値絶大。


まず、前提として「好きなことをやっているだけでは幸せになれない」「私たちが『正しい』と思っていることが、実は私たちを苦しめていたり、私たちに損をさせている」と問題提起。


幸せを感じるためには「温かな人間関係を築ける人こそが幸せを手に入れる」「『人を愛する力』が温かな人間関係を構築する」「友達は数より多様性が幸福度に影響を与える」が大事だ、とする。


経験か、金か、については「経験や体験にお金を使った場合の幸福感は時が経つにつれて増加する。その一方で、モノにお金を使った場合の幸福感は時が経つにつれて減少する」「幸福度が高まる経験の条件は①世の中とのつながりが実感できる②『繰り返し語ることができる』思い出となる③『自分がなりたいと思っている自分像』につながる④『めったにないチャンス』を得られる」「少しの金額でも他人のために使うことで、私たちは幸福感という大きな見返りを得ることができる」「お金に意識を向けるのではなく、時間の使い方を考える」との指摘が納得だ。


パートナーシップについては「努力する気がないなら結婚するな」と断じたうえで「パートナーシップの最大の敵は『慣れ』。慣れに抵抗するための努力を」「『性格の一致』より『価値観の一致』が重要。パートナー間、夫婦間の価値観を一致させる時間を持つべし」「パートナーがつらい時に寄り添うよりも、うれしい出来事があった時に最大限の喜びを表現しよう」と指摘。厳しいが、鋭い。


ポジティブ、ネガティブについては「幸福度は、ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生満足度が影響している」「個人的成長を実感すると、将来への希望がさらに強くなり、ポジティブな感情もより強くなる」「ネガティブな感情は消そうとすればするほど大きくなる。ネガティブな感情を感じたら、記録を取ることが有効」「どんな自分も『それでいいんだ』と思える力が、人生満足度に影響する。受け入れられる部分は受け入れることができる人のほうが幸福度が高くなる。なので、自分で自分の労を労い、自己受容力を高める」と述べる。なるほど。


求める幸せの指標として「実現した時に幸福感が長続きする『非地位財』と、長く続かない『地位財』がある」「地位財は人を行動的にし、非地位財は人に継続する力を与えてくれる。自分の状況に合わせて使い分けよう」は、頷かされる。


仕事への向き合い方としては「夢や目標は実現することが重要なのではなく、まず『持つこと』が重要」「今の自分の仕事が、自分の夢や目標に向かって進捗していると実感できれば、人はもっともやる気が出る、つまりモチベーションが高まる」「仕事をする人たちには『ジョブ:単なる労働と捉える』『キャリア:働く動機が経歴や名誉、地位』『コーリング:自分の仕事には深い意味があるという実感がある』のタイプがある。自分の仕事をコーリングにするには①仕事で関わる人の数を増やす②仕事の意味を拡大する③仕事に一手間の変化を加える」と主張しており、我が身を振り返りと恥ずかしくなる…


とにかく、どこを読んでもためになる。「大切なのは『知識の数』ではなく『できることの数』」「『この時間でどんなことができるだろうか?』と、お金ではなく、自分の生み出せることに焦点を当ててみる」は、早速実践したい。超お薦めの良書だ。