世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ケイト・マーフィ「LISTEN」

今年42冊目読了。ヒューストンを拠点に活動するジャーナリストである筆者が、知性豊かで創造力がある人になることを提唱する一冊。


ついつい自分がしゃべってしまい、傾聴の大事さは「知識としては知っている」ものの、実践できない身にとっては、色々と耳に痛い…


そもそも、聴くことについては「感情の深みを育むには、相手の声が自分の体と心の中で共鳴する必要がある」「本気で耳を傾けるとは、相手の話によって、身体的にも、体内物質のレベルでも、感情的にも、知的にも、動かされるということ」「つながるという行為は必ず双方向」「よく『聴く』とは、相手の頭と心の中で何が起きているかをわかろうとすること。そして『あなたを気にかけているよ』と行動で示すこと」と、その重要さを述べる。


現代社会がSNSに乗っ取られていることの影響については「ソーシャルメディアは、『あらゆる考えを世の中に向けて発信する、仮想のメガホン』と、『自分に反する考えを取り除く手段』をすべての人に与えた」「あなたは一体どのくらいの頻度で、誰かと直接会って、話をじっくりと掘り下げる時間を持ったり、持つ努力をしたりしているか?」「携帯電話を見ている間に『何かを生み出す時間』を失っている」「人が注意力散漫であればあるほど、企業はお金になる」「デバイスは、人と親密になることを恐れる私たちを甘やかしている。私たちは人の面倒くさいところや欠点を避け、比較的安全なデバイスの中へと引き込まれ、気ままにスワイプ、削除を繰り返す。その結果、人間同士の交流から豊かさや細かな陰影が失われ、忍びよる不満感にさいなまれる」と指摘。これは確かにそうだな…


人間真理の仕組みについては「人の心を本当に理解することなどできない。そして詮索は、人の信頼をもっとも速く失う」「相手を嫌いになるのは、理解してもらえるという期待が裏切られたとき」「目立ちたい人は、自分が『十分ではない』ことをカバーするために自己顕示する」「不正確なうわさ話は、ほとんどの場合好ましくない行動をする人を厳しく罰したいという欲求によってなされる」と負の面に触れつつ「話を聞いてもらえないと、人は孤独になる」「友情を維持する第一の方法は『日常的な会話』」「知的、精神的な元気がないから今は聞けない、というのはダメなのではなく、人間らしい」などの面にも言及しており、なるほどなぁと感じる。


対話の重要性については「適切な質問さえすれば、誰もがおもしろくなる」「人はたいてい、とりわけ社会的には不確実性を嫌う。しかし逆説的ではあるが、生きた実感をいちばん味わわせてくれるのは不確実性」「人として成長する唯一の方法は、反対意見に耳を傾けること」「相手とつながっているという感覚をいちばん実感できるのが『笑い』」「自分の感情をひとまず置いて、先に相手の話を聞いてみよう」のあたりが心に響く。


そして、傾聴するということの土台にある心構えやポイントとして「好奇心があるということは、思い込みがないこと」「『良い聞き手』とは、話し手と同じ感情になって聞ける人」「『事実』の奥には、必ず感情がある」「優れた聞き手は、余っている処理能力を頭の中での寄り道に使わず、相手の話を理論的にも直感的にも理解するために全力をあげている」「優れた聞き手になるには『自分の弱さを理解する』」「話に素直に耳を傾けるには、冒険心がいる」「脳をできるだけ柔軟にしておくためには、できる限り多くの情報源に耳を傾ける」「右耳は言葉を聞きとり、左耳は感情を聞きとる」のあたりは意識したいところだ。


一番重たく感じたのは「私たちが皆、人生でもっとも求めているのは、人を理解し自分を理解してもらうこと。これが唯一実現できるのは、急がず、じっくり『聴く』時間を意識的にとるときだけ」のくだり。自分を反省するしかない、というところだな…