今年182冊目読了。ご存知、ショートショートの大家である筆者が、自己の初期作品を50作自選した一冊。
標題作を含め、あっと驚くもの、なるほどと思わされるもの、くすっとさせられるもの、星新一ワールドを満喫できる。
とても、まとめられるものでもないので、気になった言葉を抜き書きしてみた。さらりと読めて、楽しめる。一流の娯楽で済まない深さもまた、いい。
「つぎつぎと生産することばかりに熱心で、あとしまつに頭を使うのは、だれもがいやがっていたのだ」
「言葉など人間にはいらない。言葉がどれほど愛情を薄めているだろうか。人びとは言葉なくして得た愛情を、必ず言葉によって失っている。彼はこのように考えたのだった」
「だれでも不意に言葉づかいがやさしくなると、なにかしでかす。少し薄気味がわるくなった」「趣味となると人は盲目的に金を使い、後悔しない。私の場合だってそれと同じだ」
「世の中では、ひとと同じであることが幸福なんだ。これには、理屈もなにもない。すぐれた能力を持った者の、かすかな欠陥を指さして、笑いものにするか、迫害するということは、一種の自衛本能なんだろうな」