今年181冊目読了。今やベストセラー作家となった筆者のデビュー作にして、学校を舞台に不思議な歴史と現在が恐怖をもって交錯する一冊。
三谷宏治お薦めなので読んでみたが、なるほど恐怖感がありつつも、青春のみずみずしさ、甘酸っぱさも織り込まれていて、かつプロットがしっかりしていて非常に面白い。伏線回収も見事で、これがデビュー作って、どういうレベル?と思ってしまう。
ネタバレのため、気になったフレーズの抜き書きを。
「クラスに必ず一人か二人はいる、地味で社交性がなく冴えないが、その割に自意識過剰で自尊心が強い、というタイプの男子生徒である。つまり、由紀夫のようなタイプの生徒にはおよそ理解できない類の人物だ」「世の中にはよくこういう種類の人間がいる。いつも自分の話しかしていない、たくさんの人としょっちゅうお喋りしているように見えても、結局相手を媒体として自分を反芻しているだけ、という人間が。美香子は沙世子が自分に多くのものを与えてくれた、と彼女に感謝していたが、その実、沙世子は美香子に何も与えてはいなかった。単に彼女が自分を反芻する媒体に、あえてなってやっていただけである」
「学校というのは、シビアなものと、牧歌的な儀式とを、同じレベルで交互に平然と消化していく。淡々とこなされていく行事のあいだに、自分たちの将来や人生が少しずつ定められ、枝分かれしていっているということに生徒は気づかないのだ」
「何か深い意味があるわけではない。ただ、ちょっとしたことをやってみて、その流れが変わったり、少し渦を巻いたりするのを見守っているだけなのだ-ただ、きれいな渦やさざ波を見るだけでよいのだ。それだけで彼は満足する。自分が流れにほんの少し細工をしても、なおかつよどみなく川は流れ、やがては全てもとに戻っていくという事実だけで」