世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】岩佐義樹「失礼な日本語」

今年123冊目読了。毎日新聞社校閲センター部長の筆者が、失礼な日本語を心地よい日本語に変える文章マナーを説く一冊。


文章を正しく書くコツとして「訂正をさらすという形で間違いを犯すことへの恐れを持つ」「パソコンの場合は文書を印刷する。紙ならペンで⚪︎や線をつけることができる」「人間の記憶はあてにならない。固有名詞が出るたび、一つ一つ虚心に確認することに勝る方法はない」「相手を劣った者のたとえとして使う用法、感覚が問題」「読点を加えたり、読むときに間を置いたり、語句を入れ替えたりするより、根本的な解決方法は、『文を短く切る』」などを提言する。


誤用例として「ご発言する、は私がだれかを立てるために発言するという、自分を下げて相手を高める謙譲語。ご発言される、は誤用」「お客様はご来店くださる。お客様がご来店いただくのではない。相手を立てる『くださる』より、単なる丁寧な言い方の『いただく』が好まれるのは、相手を敬遠することで自分が傷つくことを無意識のうちに避ける風潮の反映」「『すごい多い』は、『すごい』も『多い』も形容詞。『多い』に続けるなら連用形『すごく』になるべき」「『いさぎいい』にはなり得ない。なぜなら、『いさぎよい』の『よい』は『良い』ではない。漢字で『潔い』」あたりをあげていて、なるほどなぁと感じる。


イラッとくる表現として「伝聞の『そう』止めは避けるべき」「『ボーっと』というのは変。片仮名なら『ボーッと』と、促音『ッ』まで片仮名にすべき」「語源から、シュミレーションではなく、シミュレーション」などを提示。また、非常に多い誤用例では「高見の見物(高みの見物が正当)」「喝を入れる(活を入れる正当)」「肝に命じる(肝に銘じる正当)」などを挙げる。実際にはこれ以外にも数々あるのだが、これもよく理解できる。


もちろん、技術論としても最新のネタを盛り込みながらわかりやすく読み解いており、使える一冊なのだが、筆者が述べている言葉と文章の核心がすばらしい。「言葉のやりとりで最も重要なのは、相手を思う心」「シンプル・イズ・ベスト。これが伝わりやすい文章の極意」は、まさに然り。どんなに修辞を極めても、この2つが抜け落ちていたら言葉は綺麗に使いこなせない。


新書で読みやすいし、この核心に触れることができたし、気持ちの良い読了感。これは、一読をお薦めしたい。