世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】佐久間賢「交渉力入門」

今年111冊目読了。中央大学客員研究員にして、国際リーダー力研究所代表の筆者が、交渉を科学的に分析し、成功に導く戦略、ノウハウを解説した一冊。

交渉とは「人と人との利害の対立する関係の中から、対話により、あるい成果を生み出すプロセスの全体」と定義。そもそもの戦略の条件として「整合性、内容のわかりやすさ、具体的な手順、うまくいかないときの備え」を挙げる。

さらに、交渉力の基本的条件として「コミュニケーション」と「リスク折半」を挙げる。コミュニケーションにおいては「相手との間でコミュニケーションが機能して、必要な情報を伝達するためには、エモーションを鎮める必要がある」と指摘。「交渉の過程で取引されるのは、モノ、カネ、サービスではなく、満足度。物質的なものは、交渉の中の眼で見えるものでしかない」と断言する。

また、解決を導くにあたり、説得力の要因は①説明者の信頼度②メッセージの内容③説明の方法④状況の変化であるとする。問題の解決のステップとしては、a)問題点を見つけるb)それを解決する複数の代替案を考えるc)各代替案の長所と短所を検討するd)その代替案の中から最適な案を選ぶ、を踏む、と読み解く。

個別に出てくる「実際の口承の場合には、制約条件を相手に読み取られないようにしなければならない。制約条件は、交渉者の弱みとなる場合が多いので、それを相手に悟られると、逆に相手はその弱みを突いてくることになる」「忍耐力は人を冷静にする。それは、単に自分自身をコントロールするだけではなく、相手の攻撃や挑発に耐えて事態を冷静に分析し、処理する力になる」などの見解も、非常に実戦的だ。

さすがに、一昔前のように「日本人なら、交渉なんてするよりも、根回しや空気感で仕事をしろ」と堂々と言う人はいなくなっているだろうが、残念ながら、逆に「空気感として」未だにその残滓が残っている感はある。故に、このような考え方は必要だろうな、と感じた。