世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】伊藤羊一「FREE,FLAT,FUN これからの僕たちに必要なマインド」

今年18冊目読了。ヤフーのコーポレートエバンジェリストにしてYahoo!アカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長を務める筆者が、これからの世の中に必要なマインドを説く一冊。


筆者と会った事があるという欲目を抜きにしても、他の著書と同様にわかりやすく、そのうえで中身の濃さが保たれている。イラストの似顔絵が似ているのが笑える…


筆者は、リーダーシップについて「すべてのリーダーシップの原点は、『自分を知り、自分を導く』ことに尽きる。『理想的なリーダーシップ』なるかたちがどこかに存在するわけではない」「リーダーシップの根本にある『ウェイ(あり方・価値観)』が、『FREE(常識から解放され、ひとりの人間として自由に生きる。自分を導く),FLAT(一人ひとりが、異なる意思を持つリスペクトされるべき存在である。他者を導く),FUN(一人ひとりが意思を決めて生きられれば、楽しく幸せな社会になる。社会を導く)』」と断じる。


コロナ禍に執筆された本だからこそ「コロナショックを経験したいまだからこそ、自分たちがいかに常識にとらわれて自由を失っていたのかを確認できるし、これを教訓に、可能な限りポジティブな方向へ変化させていきたい」「一人ひとりが『なんとなくの正解』から勇気を持って逃れて、自分で決めた道を歩いていくことがなにより大切な姿勢」というのは非常に真に迫っている。


自分を導くとは「人は、決断して、未来に向かって果敢に進んでいくしかない」としたうえで、実際に取り組むには「自分で『自分にとっての正解』を決め、まずは宣言する。『自分の正解』を言語化し、自分を客観的に見つめる。そして宣言したことに毎日取り組み、取り組んだ成果を振り返り、気づきを得る―そうやって、習慣に代えていく。習慣になっていれば、自分が決めた道をこつこつと歩いていくことができる」「過去を振り返り、自分の『譲れない想い』を知る。その想いを行動に移して、経験を積み重ねていくことで、あなたの未来はつくられていく」のあたりが参考になる。
仕事をする上では「『行動を振り返り、自分に引き寄せて考えて、教訓となる気づきを得る』ことが、『仕事力』を鍛える最強の方法」「自分の未来を変えるには、いま現在、過去の延長線上にはない新しい経験を積み重ねていくことが必要」のあたりが鋭く、耳が痛い…


他者に向き合う心構えとして「人はみなオンリーワンで、FLATに、一人ひとりがリスペクトされるべき存在だ。みんなちがっていていい。『存在を尊重されるべき』」「たとえ意見が対立しても、それは誰かを否定するわけではなく、考え方がちがうだけ。『ちがっていてあたりまえ』を受け入れられるのは、ビジネスパーソンとして、ひとりの人間として、そして社会を創っていくうえでとても大事な姿勢」は、本当にそうだなぁと思う。


リーダーの仕事を「①ゴールを設定し、チームで共有する②プロセスを明確にして導く③安全・安心な職場にする④個人の才能と情熱を解き放つ」と定義。その手法の1on1ミーティングについては「メンバー自身に考えて答えを出してもらうのが目的」「リーダーがやるべきことは①個々のメンバーの今の気持ちや、感情的な部分を受け止める②チームのゴールに対し、いまギャップになっているものを理解してもらう③ギャップをどう解決すべきか、自分で考えてもらう」と意義を述べる。
他方、リーダーとは「チームと上位概念(ここでは会社)のあいだで、必死にもがく存在」としたうえで、姿勢としては「平時は『After you.』有事は『Follow me.』」「決断はバッサリ、ケアはじっくり」として、具体的には「リーダー自身が『譲れない想い』を持ってこの瞬間を生き、それをメンバーに本気で語り掛ける」「コミュニケーションの量が、質を産む。相手をリスペクトしつつ、コミュニケーションの量を確保しよう」あたりが取り組みとして大事だ、というのはなるほどと感じた。


陥りがちな罠については「自分の意思で行動や人生を決めることができればFUN(楽しい)になり、自分で決めることができなければ苦痛になる」「文句を言ったり不安にとらわれたりしていても、つらさが増すだけで、解決に向かうわけではない」と警鐘を鳴らす。


生きるとは何か。筆者が説く「人は、人々の笑顔のために働き、生きている」「遠い目標やビジョンは、常に見続けて創り続けなければならない」という主張は、確かにそうだなぁと共感する。


この本を読むと、筆者が述べる「私が想いをはせる未来は『全世界の77億人が笑顔で幸せに生きられる場所』を創ること」が、あながち無謀とも思えなくなるところが本当に凄い。


ただ、いきなり飛翔できるわけでもない。筆者が述べるとおり「生きていくというのは『行動』。自分の行動は、長年体にしみついた習慣になっていて簡単には変わらない。行動を変えるためには、しっかりと時間をかける必要がある」「習慣になるまで繰り返し続けたことが力になる。そう信じて鍛え続けていくうちに、少しずつ結果が出る。成長するには『根性を出してしつこく続ける』というプロセスが必要」を自覚したうえで、「いきなり『社会を変える!』と力んで考えるよりも、いま目の前の仕事に集中し、そのうえで少しだけ幸せな社会について想いをはせる」ということを実践していくしかないんだろうな。