世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中竹竜二「ウィニングカルチャー」

今年2冊目読了。株式会社チームボックス代表取締役日本ラグビーフットボール協会理事の筆者が、勝ちぐせのある人と組織のつくり方を提唱する一冊。


これは非常に面白く、価値のある本だ。実際に改革を進めていったストーリーは興味深いし、成人発達理論の加藤洋平先生との対談も読みごたえがある。


ウィニングカルチャーとは「掲げた目標を達成すべく組織が一丸となって動く事。そして自分たちの掲げた目標を信じるだけでなく、あえて疑い、自問し、考え、進化し続けること」「問い続ける組織文化」と述べる。


そして、組織を育てるうえで、リーダーについて「リーダーを育て、フォロワーシップを育んでいく。その過程で組織に属するすべての人が変わろうとしたとき、組織文化が大きく変容を遂げる」「リーダーは日頃から自分たちの組織文化を把握し、目標を達成するために現在の組織文化が最適なのかを問い続けなければいけない」ということを求める。


組織文化とは「普段あまり意識されないものの、組織のあらゆるものに影響を及ぼす価値観のこと」「そこに属する一人ひとりの感情の集積」「ある意味ではきれいごと。このきれいごとを素直に表現し、誰もが躊躇なく実践できることこそ、組織文化が根付いている証左」と定義する。


そのうえで、組織文化を改革するためのポイントとして「個人が成長するには自分をできる限りさらけ出し、現在地と目指す目標を明確にして変わる必要がある」「弱みを見せることからしか、自分らしさを知ることはできない」「組織がオーセンティシティを大切にしたいなら、まずは中にいる一人ひとりが自分らしさを出していかなければならない。個人の恐れの壁を壊して、本音で語り合うことが必要。痛みを伴うが、それこそが組織文化を変える最初の一歩となる」「互いの成長を尊重したうえで本音を言い合えば、時間が経つにつれてさらけ出しの大切さを実感できるようになっていく。こうした経験を重ねると、さらけ出すことに抵抗がなくなっていく」
「組織文化を変えようとするときには覚悟が必要。なぜなら、時には居心地の悪さや痛みを覚えることがあるから。それを克服しなければ、強い組織に生まれ変わることはできない」
具体的な手法として「組織文化を変える手順は
①仲間をつくる
②組織の理想像を決める
③行動基準を決める
④振り返りとフィードバック a.TELLL(伝える)b.SHOW(見本を見せる)c.ASK(問いかける)d.DELEGATE(託す)」とする。また、「組織文化を変えるには、所属する人の言葉と行動が変わらなければならない。まずは言葉が変わり、話し方が変わっていく。最初は取ってつけたように話していた言葉が自然になじんでいくと、行動や姿勢も変わっていく」「定期的に立ち止まって、自分を疑ってみる姿勢が重要。うまくいっていたことを成功パターンとして型にはめず、新たな組織文化を疑い、問い直していく」「無意識の中にあるものを知るにも、具体的な言葉や行動など、意識できる部分にしか手掛かりはない」のあたりに注意を向けるよう提言する。


そして、そもそもの成長という事についての「将来なりたい自分に変わるには、たんに学んで新しい知識を手に入れるだけでなく、それまで自分が頑張って身につけてきたものを打ち壊す必要がある。古い価値観を手放したあとには、新たな知識を学ぶ『学び直し』が必須」「現在の知識や過去の成功体験を捨て、違うものを受け入れることで、人や組織は成長する」「人は、振り返ることからしか成長できない」のあたりも、納得性が高い。


筆者の「人材育成において大切なのは、学ぶ姿勢を育むこと。一人ひとりの中に学ぶ姿勢がなければ、幾ら教育をしても吸収されない」「組織文化を変えるには、勇気、元気、根気」という主張はなるほどと共感させられる。問題は、こういった取り組みは危機に瀕する前に、危機を感じた時に行わねばならない、ということ。今、大変革の時期にある組織内ではすぐに活用することは難しいが、いずれ必要になる、と信じて、知識を念頭に置いておきたい。