世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】サン=テグジュペリ「戦う操縦士」

今年62冊目読了。フランスの作家であり飛行家の筆者が、第二次大戦下でドイツと戦うフランスの偵察飛行を描き、そこから感じたさまざまなことを記した一冊。

これは、現代社会においても必読書だ。最初のうちは、ナチスドイツに対して地滑り的崩壊をきたしているフランスでの無駄な偵察飛行への不満などが述べられているが、死線を超える中で、その思いは圧倒的な考えに至る。最後に筆者が練り上げて辿り着いた「信条(クレド)」は、人類が達した叡智の光であり、発刊当時から「ヒトラーの『我が闘争』に対する民主主義からの返答」として高く評価された。

記述の巧みさはもちろんのこと、筆者の信念が素晴らしく心を揺さぶる。「自らの《存在》を築き上げるのは言葉ではなく、ただ行動だけなのだ。《存在》というのは言葉の支配下にあるのではなく、行動の支配下にある」「私は信じる。個別的なものへの崇敬は死しかもたらさないことを。─それが築くのは類似に基づいた秩序でしかないからだ。(中略)したがって私が戦うのは、それがだれであれ、他の習慣に対してある個別の習慣だけを押し付ける者、他の国民に対してある個別の国民だけを押し付ける者、他の民族に対してある個別の民族だけを押し付ける者、他の思想に対してある個別の思想だけを押し付ける者だ」という言葉は、今なお(いや、今だからむしろ)燦然と輝いている。

不安と分裂が渦巻く21世紀にこそ、読みたい一冊だ。必読書。