世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

【読了】ベルクソン「笑い」

今年105冊目読了。19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの哲学者が、笑いのメカニズムを追求した一冊。正直、かなり難解で、パッと理解するのはなかなか困難。ただ、SNSやスマホに慣れきっている時代だからこそ、こういった骨太な本を読む必要があると…

【読了】萩原遼「北朝鮮に消えた友と私の物語」

今年104冊目読了。元・赤旗記者としてピョンヤン特派員を務めたこともあるフリーランスの著者が、若い頃の朝鮮人の友との交流から、その皮肉な人生の荒波、そしてそれを招いた北朝鮮及び金日成体制への鋭い批判を事実ベースに書き起こした一冊。思想的に言う…

【読了】磯田道史「武士の家計簿」

今年103冊目読了。茨城大学准教授の筆者が、加賀藩御算用者の幕末維新をその緻密な家計簿から読み解く一冊。映画化されても見向きもしていなかったのだが、この本は実に面白い。「御算用者」という会計係を務めることで、階級主義の穴である「実力主義エリア…

【読了】木村裕主「ムッソリーニ」

今年102冊目読了。東京外大教授、外務省専門調査員、在イタリア日本大使館広報文化担当官などを歴任した筆者が、ムッソリーニの生涯を通じてファシズムの何たるかを掘り起こす一冊。後発のナチズムのほうが圧倒的な迫力でヨーロッパを席巻し、嵐に巻き込んだ…

【読了】高崎宗司「検証 日朝交渉」

今年101冊目読了。津田塾大学教授の筆者が、終戦後から六者協議に至るまでの日朝交渉の歴史経緯を書き表した一冊。全体的に、北朝鮮への配慮トーンが強すぎないか?という感じはするものの、交渉の流れとその都度の挫折の経緯、内外的要因などが丁寧に描かれ…

【読了】藤井忠俊「国防婦人会」

今年100冊目読了。茨城大学講師の筆者が、満州事変後から国防婦人会がカッポウ着による兵士の見送りを行い出してからの興隆と、その終焉を描き出した一冊。これを読むと、戦後の後知恵で教育を受けた身としては「赤紙と、それに耐える…」というステレオタイ…

【読了】横手慎司「日露戦争史」

今年99冊目読了。外務省調査員としてモスクワ滞在し、慶応大学法学部教授になった筆者が、日露戦争は20世紀最初の大国間戦争と位置付けて見返してみた一冊。坂の上の雲に代表される「司馬史観」は、読み物としては面白いが日本人の「歴史からの学び」につい…

【国宝検定:時宜を逸するな。】

昨年、第一回国宝検定で上級を取り、「国宝の伝道師」の称号を手にすることができた。では、今年の開催は?と思って、問い合わせてみたところ、「恐れ入りますが、次回の詳細につきましては、未定となっております。 詳細が決定次第、随時ホームページにてご…

【読了】佐々淳行「東大落城」

今年98冊目読了。警察庁幹部として、学園紛争と対峙した著者が、東大安田講堂の陥落に向けた72時間を実録として書き記した一冊。警察エリートでありながら、その精神、行動は豪胆。「外野守備の外事課長でヤジを飛ばしているより、主戦投手となって真っ向勝…

【読了】三島由紀夫「仮面の告白」

今年97冊目読了。昭和を駆け抜けた名作家の最初の著書にして、人間の暗部をどす黒く描き出す一冊。これは凄まじい衝撃を残す一冊だ。「こうあるべき」との社会からの圧力と、それに対して自分の感性がまったくずれてしまっている悲劇。自分なりには何とかな…

【読了】紀田順一郎「二十世紀を騒がせた本」

今年96冊目読了。近代史評論家である著者が、社会を騒がせた活字について当時の時代背景とともに紹介する一冊。これは非常に興味深い。二十世紀の特性として「無定型の大衆社会はちょっとしたバグによって急激なシステムダウンを起こし、予想もしない方向に…

【国宝】伝源頼朝像

神護寺。似絵は、藤原隆信が創始してブームを巻き起こした。等身大の絹に描いた着色画。本作は、三幅を奉納した際の「足利直義願文」から、足利直義とする新説があるが、当否は不明。位の高さを表した強装束、冠の後ろに垂直に立っている巾子(こじ)に髻を…

【読了】三島由紀夫「潮騒」

今年95冊目読了。昭和を駆け抜けた名作家の著者による、清純な恋の牧歌的小説。端的に言って「綺麗すぎる箱庭的な小説」。三島由紀夫自身の人生への向き合い方、ストイックさ、燃える情念とその最期を考えると、あまりにも予定調和の綺麗さにまとまっている…

【読了】鈴木英生「新左翼とロスジェネ」

今年94冊目読了。毎日新聞記者の筆者が、失われた世代の視点から新左翼の精神の系譜を書き記した一冊。いわゆる「ロスジェネ」と呼ばれる世代の現代の閉塞感には、新左翼の勃興期から存在した「自分探し」が通奏低音として繋がっている、というダイナミック…

【読了】半藤一利「ノモンハンの夏」

今年93冊目読了。歴史作家である筆者が、ノモンハン事件における作戦意志決定の流れを検証し、秀才揃いの作戦将校たちの無能、楽観、優柔不断が引き起こした惨事を厳しく糾弾する一冊。旧帝国陸軍の作戦将校が起こした「人災」ともいうべきノモンハン事件。…

【読了】佐藤航陽「お金2.0」

今年92冊目読了。株式会社メタップス代表取締役社長の筆者が、新しい経済のルールと生き方を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 今後の社会、経済がどうなるかに興味のある人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは3つ。…

【読了】養老孟司「バカの壁」

今年91冊目読了。東京大学名誉教授にして解剖学者の筆者が、人間の脳が陥りやすい罠と、それへの対処の仕方を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 すべての人 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは3つ。 『人間が陥りやすい罠は?』には「自分が知…

【読了】山内昌之「嫉妬の世界史」

今年90冊目読了。東京大学大学院教授の筆者が、歴史上で「嫉妬」という感情が果たしてきた役割を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 歴史好き、及び心理学好きの人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは3つ。 『なぜ嫉…

【読了】パトリシア・ウォレス「インターネットの心理学」

今年89冊目読了。メリーランド大学大学院で教授を務める筆者が、オフラインとは異なるネットでの人間心理を考察した一冊。…なのだが。これが怖ろしく読みにくい。書いてあることの個別については「なるほど、なるほど」と首肯できる。しかし、総体として「じ…

【読了】ウーテ・フレーフェルト「歴史の中の感情」

今年88冊目読了。ドイツのマックス・プランク人間発達研究所感情史研究センター長の筆者が、歴史の中で「名誉」の感情が失われた経緯と、「共感」が創られてきた流れをまとめた一冊。…なのだが。正直、久々に「読むだけで物凄くかったるい」。タイトルに惹か…

【読了】村山昇「働き方の哲学」

今年86冊目読了。文筆家の筆者が、物語を求める人間心理とその罠を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 人の語るストーリーに興味のある人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問いは3つ。 『人間はなぜ物語を求めるのか?』…

【読了】千野帽子「人はなぜ物語を求めるのか」

今年86冊目読了。文筆家の筆者が、物語を求める人間心理とその罠を書き記した一冊。 〈お薦め対象〉 人の語るストーリーに興味のある人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★ 自分の問いは3つ。 『人間はなぜ物語を求めるのか?…

【読了】立花隆、佐藤優「僕らの頭脳の鍛え方」

今年85冊目読了。元・記者にして作家の筆者と、元・外務省主任分析官にして作家の記者が、必読の教養書400冊と頭の鍛え方を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 現代社会を生きるのに危機感を覚えている人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価…

【国宝】花蝶蒔絵挟軾

藤田美術館所蔵、黒漆塗金銀蒔絵、平安時代。 挟軾とは、肘をかける脇息のこと。奈良の薬師寺の鎮守・休ヶ岡八幡宮伝来とされ、祭神の御料であった可能性もある。 花と蝶を研ぎ出している。文様には奈良時代の遺風が感じられ、平安時代前期の蒔絵の遺例とし…

【読了】田中聡、中原淳「事業を創る人の大研究」

今年84冊目読了。パーソル総合研究所主任研究員と、東大大学総合教育研究センター准教授の筆者が、人を育て、事業を創り、未来を築く方法を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 新規事業に関わる、または関わろうとしている人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ …

【読了】ダイアナ・ホイットニー、アマンダ・トロステン=ブルーム、ケイ・レイダー「なぜ、あのリーダーの職場は明るいのか?」

今年83冊目読了。コーポレート・フォー・ポジティブ・チェンジ社社長、常務取締役、レイダー・コンサルティング社社長の筆者が、ポジティブ。・パワーを引き出す5つの思考法を書き記した一冊。 〈お薦め対象〉 職場をよくしたい全てのリーダー 〈お薦め度(…

【読了】マシュー・サイド「失敗の科学」

今年81冊目読了。タイムズ紙の一級コラムニストでありライターの筆者が、失敗から成功を導く驚くべき事実を書き記した一冊。〈お薦め対象〉 失敗と向き合わねばならないすべての人 〈お薦め度(5段階評価)〉 ★★★★★ 〈実用度(5段階評価)〉 ★★★★★自分の問い…

【国宝】玄奘三蔵絵

藤田美術館所蔵、紙本着色、鎌倉時代。 天竺求法を成し遂げた中国唐代の高僧、玄奘三蔵の生涯を全12巻に絵画化した絵巻。宮廷画家、高階隆兼が描いた、やまと絵の到達点を示す名品。玄奘を法相宗祖師として仰ぐ興福寺大乗院に伝来した。 丁寧で写実的ながら…

【読了】ヘミングウェイ「武器よさらば(上下)」

今年79・80冊目読了。アメリカの小説家にして、実際に従軍記者として戦場に身を投じた筆者が、戦争経験とその中での恋愛経験をモチーフにした二冊。 戦記物は昔かなり読み込んだが、そういった小説に記載されているのは、あくまで指揮官の苦悩・決断・情報検…

【読了】ヘミングウェイ「老人と海」

今年78冊目読了。アメリカの小説家にして、実際に従軍記者として戦場に身を投じた筆者が、戦後にわたったキューバでの光景から小説化した一冊。珍しく、この本は若いころに読んでいたのだが、その頃にはどうもその魅力がよくわからなかった。中年になってみ…