今年79・80冊目読了。アメリカの小説家にして、実際に従軍記者として戦場に身を投じた筆者が、戦争経験とその中での恋愛経験をモチーフにした二冊。
戦記物は昔かなり読み込んだが、そういった小説に記載されているのは、あくまで指揮官の苦悩・決断・情報検討・勇気などであり、実際の最前線の兵隊の思いや現実などはほぼ度外視されている。自分自身、今現場にいる身であり、現場に渦巻く様々な感情は、指揮官が見えている視野とは全く異なるものである。
そのような観点で、非常に面白く読める。また、その中で恋に落ち、逃避行に走る主人公たち。そこからの衝撃のラストへの息もつかせぬ展開は、ヘミングウェイの筆が冴えわたっている。訪れた場所でもないのに、あたかもその光景がまざまざと思い浮かぶくらいだ。これは、記者として「現実を冷徹に見つめる」癖をつけていたからだろう。そして、それを表現する手法も。
名作は、名作と呼ばれるだけの価値がある。そう確信させてくれる良書だった。
心を打つ記述を、いくつか。
「だれかを心から好きになるとき、人は相手のために何かをしてあげたくなるものです。自ら犠牲になりたいと思うものです。」
「人生なんてなんとかなるものよ。失うものがなにもないときにはね」
「おれには苦手な言葉がある。たとえば、神聖とか、栄光とか、擬製とか、むだとか。…いままでに一度も神聖なものなんか見たこともないし、栄光あるといわれているものはちっとも栄光などなかったし、犠牲なんて、論じるほどの価値もなかった。」
「年をとっても賢くはならない。ただ注意深くなるだけだ」
「おれには苦手な言葉がある。たとえば、神聖とか、栄光とか、擬製とか、むだとか。…いままでに一度も神聖なものなんか見たこともないし、栄光あるといわれているものはちっとも栄光などなかったし、犠牲なんて、論じるほどの価値もなかった。」
「年をとっても賢くはならない。ただ注意深くなるだけだ」