今年39冊目読了。もともとケータイ小説だったのが、単行本化した一冊。
畏敬する先達がおすすめしていたので、何気なく読んでみた。非常にさらっと読めるが、中身は戦争について激しい主張をする一冊だ。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き書き。
「毎日毎日、同じことの繰り返し。代わり映えのしない、平穏すぎてつまらない生活。いやだ。苛々する。早く抜け出したい。でも、どうやったら抜け出せるんだろう?」
「授業中に眠くなるのって幸せなことだったんだな、と思う。つまり、仕事がないから眠くなれるんだ。一日中椅子に座っているだけで良かったのも、本当に気楽だった」
「国民みんなが一致団結して、報じられる戦局に一喜一憂して、日本軍を応援している。それを見たとき私は、まるでオリンピックか何かを観戦して日本代表を応援している現代人みたい、という印象を受けた。この戦争の結末を知っている私としては、なんと言えばいいのか分からない」
「自分が死んだら国が救えるなんて、どうして信じられるの?あなたたちが命を落としてまで勝利を手にして、本当に家族が幸せになれると思うの?」
「この時代に来てからは、毎日を生きることに必死で。嬉しいことよりも、つらいことや悲しいことのほうがずっとずっと多くて。こんなふうにうきうきとした気持ちになることは全然なかった。でも、考えてみれば、私は現代にいた頃も、いやな顔ばかりしていたような気がする。小さい頃はそんなことはなかったはずなのに。いつからか、毎日毎日苛々して、不機嫌な顔ばかりするようになっていた」
「こんなにも理不尽な目にあったというのに。何もかも『仕方ない』で済ませてしまう。そんなの、受け入れちゃいけないのに。どうして怒らないの?」
「生き恥なんて言葉、使わないで!生きたいって思う人を否定する権利なんて、誰にもない!生きようとする人を止める権利なんて、誰にもない!」
「『悠久の大義』。軍人たちが好んで使う言葉だ。戦場に行って死ぬことを『大義』だと言っているのだ。死ぬことのどこが正義なの?死ぬことで果たされる忠義なんて、正しいものだとは思えない。おかしい。戦死することを喜びだと思う軍人も、戦死した人を立派な日本人だと賛美する一般人も、みんなみんな、おかしい。どうして誰も気づいてくれないの?」
「私たちは、日常的に命の危険を感じながら生きたりする必要がない。こんなに満ち足りた生活をしていて、あの頃の私は、いったい何が不満だったんだろう?現代の日本は、本当に幸せだ。でも、テレビで海の向こうの遠い国のニュースを見るたびに、私は息苦しくなる。まだ、戦争をしている国がある。爆撃に怯えて暮らす人たちがいる。内戦で失われるたくさんの命がある。信仰の名の下に自爆テロをする人がいる。戦争は終わっていないんだ、と痛いくらいに感じた。このままでいいわけがない。でも、私に何ができる?」
「新しい世界。そうだ。私は、この世界で生きていくんだ。たくさんの苦しみと悲しみと犠牲の上に築かれたこの新しい世界で、私たちは、これからも生きていく。この世界をつないでくれた、数え切れない人たちの命と愛を、全身に感じながら」