今年38冊目読了。ピュリッツァー賞を受賞したアメリカの作家である筆者が、生命への深い関心を、不思議な親子のやり取りを通じて描き出す小説。
最初は、ただストーリーを掴みにくくてしんどかったが、途中から一気に引き込まれた。終盤は心を打たれて、脳髄が揺さぶられる感覚。あまりに切ないラストも胸を打つ。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜書き。
「完璧な人などいない、でもね、私たちはみんな、完璧からの外れ方がすばらしいの」
「人は四つのことに心を使わないといけない。すべての生物に優しくすること。平静な心を常に保つこと。あらゆる生き物の喜びを見て、自分も喜びを感じること。すべての生き物の苦しみを自分のものとして感じること(仏教の四無量心。それぞれ『慈無量心』『捨無量心』『喜無量心』『悲無量心』)」
「人間は数万世代にわたって手探りで子育ての問題を解決しながら、命をつないできたのだ。そんな中で私たちがいちばん手際が悪いなんてことはないだろう、と私は思った。実際その場面になると、アリッサも私も親としてのスコアを記録する余裕はまったくなかった。ロビンが保育器から出てきたとたん、人生は消防訓練に変わった」
「人間が寂しいのは馬鹿だからさ。パパ、僕らは動物からすべてを奪ったんだ」
「可塑性はすべての段階で認められている。生得的な能力を伸ばそうとする際、年を取るにつれて週間がその邪魔をする」「世界は何が有効かを考えるための実験室であり、それを裏付けるのは信念だけだ」
「私たちがそのときいた場所は急速に新たなものに生まれ変わろうとしていた。サンプルが一つしかない事象から先を予測するのは困難だ」
「宇宙の全体は存在の全体よりも無限に小さい…宇宙の一瞬一瞬は無限の存在に支えられている」
「何をどう計算しても生まれるはずのなかったその世界は絶えず変化し、無数の歌声がその空気に存在の証拠を刻んでいる」