世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】デビッド・ヴァイス、マーク・マルシード「Google誕生」

今年165冊目読了。ピュリッツァー賞受賞経験のある「ワシントン・ポスト」紙記者と、「ワイアード」誌の共同創刊者である筆者が、ガレージで生まれたサーチ・モンスターの背景とその成長をまとめ上げた一冊。


かなり記述が詳細で読み疲れるのが難点だが、これは読みごたえがある。そして、グーグルガイと呼ばれる創業者2人の天才ぶりには舌を巻くばかりだ。


グーグルの競争力の源泉となる発想や行動は「労働の細分化が進んだこの時代において、グーグルはひそかにパソコンを買い集めて、その一台一台を自分たちで組み立てて巨大なネットワークを構築している」「この会社がマーケティングを行う必要がないのは、何よりも最高のサービスを提供するという利用者重視の姿勢が企業文化として育まれているからである。そして利用者は、そのお返しをするかのように、グーグルの最大の支持者になる」「すべてのリンクが同じように重要なわけではない。ほかのリンクよりも重要なリンクがあるのだ。では、何をもってサイトの重要度を測るのか?いたって簡単だ。あるサイトに向けてリンクがたくさん張られていれば、そのサイトはリンクが少ししか張られていないサイトよりも重要である」「グーグルの面白いところは、ウェブ検索を行っているだけでなく、そこで使っている機能を他のソフトウェアに組み込もうとしているところだ」のあたりであると感じる。


また、グーグルの強みは「グーグルのウェブデザインは、そのスクリーンの背後の設計が複雑なのに反比例するように、単純でシンプル」「検索エンジンは無料でユーザーに使ってもらい、利益は広告から上げる。重要なのは、どの情報もすべて平等に扱うということ」「広告収入に依存した検索エンジンは、本質的に広告主の意向を反映したものになってしまう。よい検索エンジンには広告が少ない。ユーザーは、必要な情報を探す際は、そのことを心しておくべきだろう」のあたりであり、結果として「AOLやヤフーなどのインターネット界のリーダーたちが、ユーザーがサイト上にいる時間を引き延ばそうとしていたのに対し、グーグルの関心は、どれだけ速く、検索結果を提供し、ユーザーのニーズに対応し、グーグルのサイトからユーザーが探している別のサイトに行かせられるか、というところにあった」という違いになったのだろう。


この本は、グーグルの危険性について「未来の世代が抱く世界観は、アメリカの圧倒的支配によって形作られる危険性がある」「クリック詐欺という大きくなりつつある問題に対して、グーグルはクリック詐欺についてのデータは持っているものの、十分な資金や人手を投入して戦う動機を持っていない」などの点に触れているのは平等かつ秀逸だと感じた。


発想が凄すぎてなかなか参考にできないが、成功の手掛かりとして「不可能に思えることには、できるだけ無視の姿勢で臨むこと」「科学やテクノロジーを梃子にして、巨大なインパクトを世界に与えられるような機会がそこらじゅうに転がっている」「成功に導く唯一の道はまず失敗をたくさんすること」「大きなことに挑戦するには、多くの人達を巻き込まなければならない。そうすることで、自分たちはさらに好きなことができるし、役立つことができる」「自分たちは正しいことをするんだ、と二人は真剣に考え、熱心に取り組んだ」「人間が生産的になれるのは、自分にとって大切なことや自分が考え出したことを行っているとき、つまり情熱を持っていることに取り組んでいるとき」のあたりはなるほどなぁと唸らされる。


「そのアイデアは、自分も納得できるような現実的な問題を解決しているか?実際に利益を生み出すビジネスになりうるか?そして創業者が優秀で情熱的で有能であるか?」「コンピュータおたくではあったが、同時に外の世界に対しても非常に幅広い関心を持っていた。概して、この2つを兼ね備えていないと世界で成功するのは難しい」


…それにしても。「究極の検索エンジンは、検索者が言わんとしていることをその通り正確に理解して、求められたまさにその答えを提供する」という野望はすさまじい。それが実現したら、どんな世の中になるのだろうか??