世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】羽生善治「決断力」

今年166冊目読了。史上最強と言われた将棋棋士の頂点であり、今なおタイトル戦に挑むという超人的な実力を見せる筆者が、全盛期に決断力についてまとめた一冊。


新書だからといって読みやすいと油断してはいけない。鋭い記述がそこここにあり、本当に勉強になる。


人間心理については「人間は本当に追い詰められた経験をしなければダメだ。逆にいうと、追い詰められた場所にこそ、大きな飛躍があるのだ」「怖いとか不安とかいうマイナス面に打ち勝てる理性、自分自身をコントロールする力を経験と同時に成長させていかないと、経験を活かし切るのは難しくなってしまう」「勝とうとすることはある意味、欲である。その欲が考えを鈍くしたり、度胸を鈍くする」「受け身の姿勢でただ教わるというのでは、集中力や思考力、気力といった勝負に必要な総合的な力を身につけることはできないだろう」のあたりが、非常に参考になる。


また、ふだんの心構えとして「意表をつかれることに驚いてはいけない。そんなことは日常茶飯事であって、予想通りに進むことなど皆無といっていい」「ごちゃごちゃ考えないということは、固定観念に縛られたり、昔からのやり方やいきさつにとらわれずに、物事を簡単に、単純に考えるということだ」のあたりは、言うは易く行うは難し。レベル高すぎる…


とらわれない考え方については「常にギリギリの勝ちを目指しているほうがむしろ確実性が高くなる」「ぎりぎりの勝負で力を発揮できる決め手は、大局観と感性のバランス。感性は、読書をしたり、音楽を聴いたり、将棋界以外の人と会ったり…というさまざまな刺激によって総合的に研ぎ澄まされていく」「守ろう、守ろうとすると後ろ向きになる。守りたければ攻めなければならない」「プレッシャーを克服するには、経験が大きく役立つ。机上の勉強や練習では養えない。実戦の中でいろいろな局面にぶつかり、乗り越えることでしか身につかない」「山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、『選ぶ』より『いかに捨てるか』のほうが重要」のあたりが、なるほどと唸らされる。


人生を生き生きと過ごすうえでは「何事でも発見が続くことが、楽しさ、面白さ、幸せを継続させてくれる」「常識といわれていることを疑ってみることからアイデアや新しい考えもうまれる」「誰でも、これまでに興味を持って夢中になったものがあるだろう。そのときの感覚であり、充実感を思い出せば、集中力のノウハウはわかる」「年齢にかかわらず、常に、その時、その時でベストを尽くせる、そういう環境に身を置いている。それが自分の人生を豊かにする最大のポイント」「一回でも実践してみると、頭の中だけで考えていたことの何倍もの『学び』がある」のあたりは留意したい。


発想するという力については「直感力は、それまでにいろいろ経験し、培ってきたことが脳の無意識の領域に詰まっており、それが浮かび上がってくるものだ」「空白の時間をつくることは、心や頭をリセットすること」「何十年も同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だ」「なるべくいい方向に考え、忘れれば脳のその部分に空いたスペースができる。そこから新しい発想が生まれるのではないか、むしろ忘れることはいい傾向なのではないかと考えるようにしている」に、思わず納得。


人生への向き合い方として「どの世界でも、真剣に向かい合い、理解し合おうという気持ちから、お互いの心が通じ合い、現状打破の道も見えてくる」「基本は、自分の力で一から考え、自分で結論を出す。それが必要不可欠であり、前に進む力もそこからしか生まれない」のあたりを心に留めたい。


これは、ぜひ、一読をお薦めしたい。