世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】おおたとしまさ「21世紀の『男の子』の親たちへ」

今年155冊目読了。心理カウンセラー、中高の教員免許を持つ教育ジャーナリストの筆者が、男子校の先生からのアドバイスをまとめ上げた一冊。


まずは「21世紀のど真ん中を生きる男の子たちにいまどのような感性が求められているのかを明らかにしていきながら、親自身が無意識のうちに持ってしまっている『男らしさ』や『男のくせに』のような20世紀の男性像とのズレを意識化し、補正してもらうことが本書のいちばんの目的」と、この本のポイントをズバリ述べる。これは、確かに留意しないといけないところだ。


特に男親が気を付けるべきところとして「『男性であること』にとらわれず、あらゆる思い込みを捨てて、あらゆる選択をテーブルの上に並べて自分の人生を決めてほしい」「35億人の女性との円滑なコミュニケーションのためには、相手が自分とは違う性であることへのデリカシーを常に頭の片隅に置きながら、それ以上に一人の人間として敬意を払いながら接することが重要。失敗してしまったら、自分の未熟さを素直に謝る。それを意識して場数を踏むしかない」を挙げる。確かに、息子がこれをできないと困るし、自分自身も気をつけねばならぬ。


また、これからの社会を生きる上において「グローバル社会と連呼するなら、親世代が考えなくてはいけないのは、急速なグローバル化に対する反動としての国内外の『分断』を乗り越えられる若者たちを育てること」「その場その場で自分が生きていくうえで必要なものを自分で見極めて、どうやったらそれを手にすることができるかを考え、そのための努力を続けることができる力こそが『生きる力』の正体「これからの時代を生きていくために必要な力は『そこそこの知力と体力』『やり抜く力』『自分にはない能力をもつひととチームになる能力』の3つ」」の指摘もそのとおりだなぁと感じる。


幼児教育、早期教育などが叫ばれる中ではあるが「感性を育むには、実体験をいっぱいさせてほしい。バーチャルじゃなく。それは親しかできない」「幼児期に大切なのは身体をつくること、そして知識よりも感性を磨くこと。そのためには、自然に親しむ、人と関わる、遊ぶ」「大人になってからできることは大人になってからやればいい」「あのひとはちゃんと見てくれてる、わかってくれてる。そう思える大人がいれば、子供は決してねじ曲がらない」のあたりは、非常に共感する。


色々なテクノロジーに囲まれている今の子供たちをどう育てるか、については「『個体発生は系統発生を繰り返す』という。であるならば、原始の人類が、火や刃物を使い始めたときと同じような体験を、子供たちも幼いうちにスマホやインターネットで追体験すべき。そうすることで、危険なものへの感度が上がる」「子どもが没頭するには二つの条件が必要。一つは自分のやり方で自由にできること。もうひとつはモヤモヤが置かれるってこと」と提言。これも、確かにそのとおりだ。


親子関係については「親の不信感を受け取れば、子供はますます自信をなくし、本人の意志にかかわらず、悪いほうに向いていく」「心理的に追い詰められている人間は視野が極端に狭くなる。何か一点に集中できるようにしてあげると、そこから徐々に視野が広がることがある」「悩みや不安を抱えているひとの話を聞くときに最も大事なのは『解決モード』にならないこと」「子供の成長に合わせて、親も愛し方を変えなければならない」「結局のところ、親は実は無力である」とするが、これ、上司と部下の関係にも相似形を成すような話しだな。


子どもだけでなく、今を生きる親自身も「単に現状を批判するという意味だけではなく、より良くするためのアイディアを批判によって洗練しないと、結局現状を変えられない」「人生における『決断』の良し悪しは、決断した時には決まらない。決断したあとに決まる。自分の『決断』を事後的に『正解』にできる力こそ、”正解のない時代”に『自ら正解をつくり出す力』になるはず」「『自由』とは『無限の問いの集合体』。『問いを問いとして抱え続ける強さ』がなければ『自由』には耐えられない。問いを問いとして抱え続けるためには、簡単に答えを出さない力が要求される」「自分以外の何かに寄りかからないと価値が証明できない人生は、本当の自由な人生ではありません」「論理的に考え、手を動かし、間違え、根拠を疑い、試行錯誤して、思い込みを一つずつ捨て去る訓練を積むことで、ひとは再び少しずつ自由になれる」のあたりは考えるべきところだろう。


親、というのもさることながら、自身という一人の社会人にとっても有益な中身が多い。客観化することは大事だな…