今年154冊目読了。アメリカのSF界の巨匠が放つ、圧倒的なボリュームと文脈、登場人物によって楽しませる一冊。
読み始めは、そのボリュームに圧倒されたが、細やかなプロットに基づき、人間と機械の共存、格差社会、など様々なことを考えさせられる。
小説系のネタバレは嫌いなので、気になったことを抜き書きしてみた。
人間と自由については「人間というものは、わかっている危険に立ち向かうことができる。だが、不可解なものには慄え上がるのだな」「他の連中が喜んでしたがることをとめたがるのは、人間の心の中に驚くほど深く喰い込んでいるってことなのだろう」「革命は大衆を同志にすることで勝ち取られはしないのだよ。革命は、ごく少数の人々が実行することのできる科学なのです。それは正しい組織を持っているかどうか、とりわけ、意志の疎通いかんにかかったいるのですよ」との記述や「わしが自由である理由は、わしのやるべきすべてのことに対して道義的に責任があるのはわしだけだということがわかっているから」というあたりが心に響く。
組織論からすると「民衆は愛させるより憎ませるほうが容易なものだ」「敵を相手にする場合、取るべき方法は二つだけだよ。殺すか、友人にしてしまうかなんだ。その中間にある方法はいずれも、未来に禍根を残すことになる」のあたりは深くえぐっているなぁと感じる。
また、統治ということについても「武力のみによって植民地のほうが屈服したことはない。どの場合も帝国側はどこか他のところで忙しく、疲れ果て、全力を使うことなくあきらめてしまっている」「王様というものは圧制政治に対して唯一の民衆を守るものなんだ。…特にすべての暴政のうち最悪なるもの、民衆自身に対してね」のあたりが興味深い。
面白くて、考えさせられる。不思議ながら、これは読みごたえがあった。