世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】アダム・グラント「ORIGINALS」

今年156冊目読了。ペンシルベニア大学ウォートン校教授で、組織心理学者の筆者が、「誰もが『人と違うこと』ができる時代」をどう生きるか、を提言する一冊。


筆者は、オリジナルであることについて「オリジナルな人とは『みずからのビジョンを率先して実現させていく人』」「世界を創造する者は、自主的に考える人であり、『好奇心が強い』『まわりに同調しない』『反抗的』という3つの特質がある」「世界を変えてきたのは少人数グループだけ。自分が一人ではないと感じるには、支持する人が大勢でなくてもよい」「オリジナルな人たちは、あえて苦しい戦いを選び、理想の世界を実現しようととり組んでいる。人生を向上させ、より多くの自由を得るために行動することによって、一時的に快楽を捨て、みずからの幸福を後回しにしているかもしれない」というが、それは結構しんどい生き方だよな…


人間の陥りがちな罠としては「既存のシステムを正当化すると、心が落ち着く。しかし、不本意ながらも何かにしたがっていると、不正に対抗しようという正当な怒りの感情と、世界のよりよい姿を考える前向きな意志が奪われていく」「自分の限界は、自分で設定していたにすぎない」「斬新なアイデアのなかから、適切なものをうまく選び出せない」「買いかぶりすぎる要因は『分野における経験不足』『思い上がり』『熱意』」「ものごとを変えようとがんばっているのに、相手から尊敬されていないことがわかると、怨恨の悪循環という火に油を注ぐことになる」「非常に似通っている者同士のわずかな違いこそが、互いのあいだに違和感や敵意といった感情を生み出す原因になっているなっている」「不安を感じているとき『不確実であること』はネガティブなことよりも恐ろしく感じられる」を列挙するが、これは体感としてもよくわかる。


オリジナリティを陶冶するためには「『今あるもの』をそのまま使うのではなく、みずから行動を起こして、よりよい選択肢がないか探し求める」「既知のものを眼の前にしながら、新たな視点でそれを見つめ、旧い問題から新たな洞察を得る」「直感が分析に勝るのは、無意識のパターン認識が優れているとき。知識がない場合は、じっくりと分析した時のほうがより確実な判断ができる」「先延ばしは『生産性の敵』かもしれないが、『創造性の源』にはなる」のあたり、言うは易く行うは難し…


人間、そして組織の特性として「リスクを嫌い、アイデアの実現可能性に疑問をもっている人が起こした会社のほうが、存続する可能性が高い」「ありがちなものを除外してようやく、ありえないほど自由な可能性を考慮する余地が生まれる」「最初に行動を起こしたからといって成功の確率が高くなるわけではない」「欠点に正直になると、意思伝達のやり方が変わるだけでなく、聞き手の評価の仕方が変わる」「誰に訴えかけるかというのは、どのように主張を伝えるかというのと同じくらい重要」「恐怖がはびこる場所では必ずユーモアが役立つ」という指摘には、頷かされる。


協力関係を築くためには「共通した目標達成の手段があるかどうかが、同盟関係を築けるかどうかの重要な指標になる」「『なぜ』から『どのように』へと焦点を移すと、過激さがやわらぐ」「最高の味方になるのは、はじめは反対していたが、しだいに味方になってくれた人たち」「他者の価値観を変えさせるのはむずかしいが、自分たちの価値観と相手がすでにもっている価値観の共通点を探し、結びつけるほうがずっと簡単」「『他者に対して』怒りを感じていると復讐心が生じるが、『他者のために』怒りを感じていると、正義やより良いシステムをつくる動機になる」と述べており、これも有用性が高いと感じる。


そして、子育て中の身としては「オリジナルな人の多くがリスク・テイカーなのは、周囲が自主性を尊重してくれたり、守ってくれたりするから」「人柄を褒められると、それを自分のアイデンティティの一部として取り込む」「子供にしっかりとした価値観をつちかうには、親は子供への影響力を控え目にとどめておくことだ」のあたりは、耳が痛い…心しよう。


自由には、覚悟がいる。そんなことを思わせてくれる良書だ。