世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】アルフレッド・ウェゲナー「大陸と海洋の起源」

今年167冊目読了。大陸移動説を唱えた偉大なるドイツ学者の著書を、今によみがえらせる一冊。


社会系の科目は嫌いではないのだが、それでもあまりに専門的すぎて、読みこなすには至らず…正直、ここまでの詳細な検証をしたことへの驚き以外はなかなか残らず…自身の力不足を感じる。


そんな中でも、「『真理』を発見するただ一つの道は、すべての地球科学が提供する情報を総合することである。すなわち、知られたすべての事実をもっともよく配列し、したがってもっとも確率の高いモデルを選び出すことである。さらにまた、いかなる科学がそれを提供するにしろ、新しい発見がわれわれの引き出した結論を変えるかもしれないという可能性に対して、たえず準備をととのえなければならない」は、仕事をするうえでも重要なポイントだと感じる。


大陸移動説が当たり前になってから勉強した身としては、当時の「以前には、海面上にあると海面下にあるとを問わず、すべての大陸は地球の全歴史を通じてその相対的な位置を変えなかった、と考えられていた。したがって、仮定された陸橋は中間の大陸として存在し、その後それが海中に没して海底となり、動植物群の交流がなくなった、と考えられてきた」と、大陸を陸橋が繋いているがゆえに生物の類似性が発生する、という理解は信じられないが、そんなものなんだろうな…
故に、「どの時代にも、地球はただ一つの表面地形をもっていたはずである。いったい陸橋があったのだろうか。あるいはまた、大陸は今日と同じ広い海洋によって隔てられていたのだろうか。地球上での生物の進化を理解する試みを放てきしたくないとすれば、陸橋の存在を否定するわけにはいかない。しかしその一方で、永久不変説の主唱者たちが中間の沈んだ大陸の存在を否定するその根拠をも無視するわけにはいかない。一つの可能性しか残っていない。明白であるといわれている仮定のどこかに隠れたまちがいが潜んでいるにちがいない。そしてここから大陸説が出発する」と考えたのだろうが、この理詰めの思考は今なお参考になると感じる。


ウェゲナーが優れていると感じるのは「研究がさらに進めば、ここで提案されたモデルが主要な特徴を表現しているだけのものであり、実際の状態を説明するためには、さらに複雑なことを考えざるをえなくなるかもしれない」という姿勢を抱いていることだ。今に拘泥しない、って、すごく難しい事なんだけどな…


2021年の日本に生きる身としては「いつの世も新しい理論を受け入れるのは柔軟な思考力を持つ若者たちである」の記述が痛い。いかに若者の声に耳を傾けるか。それが、この国の「老人病」脱出のひとつの鍵になるのだが…