世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】本田哲也「パーセプション」

今年35冊目読了。本田事務所代表にして、数々の企業の戦略PRに携わってきた筆者が、市場をつくる新発想についてまとめた一冊。


武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の講義を受けた縁で、伊藤羊一学部長がお薦めしていたので読んでみたら、なるほどこれは凄い読み応え。


そもそも、パーセプションとは何か。筆者は「パーセプションとは、平たく言えば、『モノゴトの見え方や捉え方』。物理的なモノや事象は、それ自体の存在と『見え方』は話が違う。見え方や捉え方というものは、人によって異なり、時代によっても移り変わるからだ」「この時代における情報発信は、もはや認知を争う戦いではない。認識の戦いなのだ。世の中のトレンドの裏側で、消費者のパーセプションの変容はなぜ起こるのか。企業は、商品やブランドにとって好ましいパーセプションをどう維持すべきなのかを考えるべきだろう」「パーセプションは世の中に1つしか形成されないのではなく、あなたの会社やブランドを見る角度や、見ている層によって異なったパーセプションが存在し得る」と、その定義と価値を解き明かす。
そのうえで「ブランドは企業視点で伝えたいこと。パーセプションは消費者視点での認識。その重なり合う部分に『オーセンティシティ:ブランドの正当性』がある」「イメージは実態とかけ離れていてもつくれるが、パーセプションはファクトが必要になる。よって、一からパーセプションをつくるには、新たな『事象』が必要になる」と主張する。


パーセプションを形成する要素を「①事象②リテラシー③グループ④タイミング⑤コントラスト」と分解。パーセプションが重要な理由については「①メタの時代②社会との接点③長期的なしなやかさ」とする。
パーセプションの5段活用として「①つくる:新たなる認識の創造、②かえる:認識変容の実践、③まもる:好ましい認識の維持管理、④はかる:既存認識の計測分析、⑤いかす:社内広報や商品開発に応用」を挙げる。


広告についても「PRは三段のピラミッド構造。下段がパブリシティー(認知)、中断がパーセプションチェンジ(認識変容)、上段がビヘイビアチェンジ(行動変容)」とわかりやすく読み解く。


売るためのヒントとしては「『世の中のどこに新しいパーセプションをつくる余地があるか』。その問いから発想することは、新しい市場やビジネスを創出するチャンスとなる」「人が口コミをする理由は①ソーシャルカレンシー②感情③実用的な価値④物語⑤人の目に触れる⑥トリガー」のあたりの記述が興味深い。


パーセプションチェンジのポイントは「①『ビフォー』と『アフター』②『主観』と『客観』③『カテゴリー』と『プロダクト』④『完全変容』と『拡張』⑤『ブランドエクイティー』」と整理。パーセプションの計測方法は「①消費者のパーセプション調査②メディアヒアリング③SNS調査」であるとする。


応用編として、応用の方向性を「①コミュニケーション対象の広がり②イノベーションへの活用」、パーセプション発想の視点を「①消費者を大義とするマーケティングへの回帰②コーポレートブランドとプロダクトブランドの区分けの消滅③市場創造の新たなアプローチ④ナラティブな時代における目的意識」とするあたりも参考になる。


これは、何度も繰り返して読んで、かつ実践することで深めていくべき感じがする。