世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】世古詢一「対話型マネジャー」

今年23冊目読了。サーバントコーチ代表取締役の筆者が、部下のポテンシャルを引き出す最強育成術を提唱する一冊。


どちらかというと技術論に寄りすぎているようにも感じるが、筆者が「実践の手引き」と述べているとおり、その点はある程度仕方ないのだろう。が、その中にも教訓は多いように感じる。


マネージャーの役割を「放っておくと個人と組織の距離が離れていくような方向に世の中は動いている。だからこそ、対話型マネジャーの必要性が際立つ」「マネジャーは、部下自身が無意識レベルで思っていることの翻訳者であり、組織と部下をつなぐ翻訳者、周囲との翻訳者でもある」「『じっくり対話し、すり合わせる』というのは、『思い込み』に触れていくこと」と定義するあたりは、現代の組織論だなぁと感じる。命令型の管理者では、組織のパフォーマンスを最大化させるのは難しい時代だからな…


相手の話に反応するポイントは「①沈黙:相手にじっくり考えさせて、自分はゆったりと待つ②うなずき:話のタイミングに合わせてうなずく③表情:自然な笑顔・口角を上げ、目尻を下げるイメージ④あいづち:相手の話に調子を合わせて言う」相手の話への返しのポイントは「①共感の返し②整理の返し③肯定の返しと反転の返し」相手に関心を寄せる話し方は「①じっくり感:間を十分に取る②不思議感:相手を性善説で見る③一緒に感:ともに考える」。
そして、チェンジ・フィードバックのステップは「①事実のすり合わせ:指摘する、反応を観察する、相手の事実を確認する②意味のすり合わせ:現状認識の確認、関係者の意味の確認③期待のすり合わせ:期待を伝える、伝えた内容の気持ちを確認する④行動のすり合わせ:具体的行動イメージ、支援できることを探す」ということを提唱する。


人間の無意識が行っているパターン「体験→信念→思考→感情→行動→結果」は、いろいろな場面で参考にできそうだ。


上司に必要なスタンスとしては「すべての行動には肯定的な意図がある、という見方」「思い込みである認識がどのようにつくられたのか、促し、深掘り、定義によって具体化して確認していく」「落ち着いたタイミングで振り返りをして、しゃべることで、改めてそのときに得た感情を呼び起こす。それにより、冷静な視点で改善策を考える」「『行動』のすり合わせはやり方を覚え、『考え方的』のすり合わせはやりがいを見出す」は、体感としてもなるほどなぁと納得させられる。


そして、割とテクニックを重んじる本でありながら、本質は「自分の行動やパターンを高次のレベルから俯瞰して捉えることが、行動変容の第一歩」「『あり方』を育ててくれるのが自己との対話。他者との対話をしていく一方で、今一度自分の中にも戻り、自己対話を行う」というところにあるんだろうな、と感じた。もちろん、自分の興味がそちらに寄っているからだとも言えるが…