世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】森岡毅「USJを劇的に変えた、たった一つの考え方」

今年38冊目読了。ユー・エス・ジェイCMOにして、窮地にあったUSJのV字回復の立役者が、成功を引き寄せるマーケティング入門を目指す一冊。


なかなか人気の本なので、図書館で相当順番待ちしたが、ようやく手にすることができた。なるほど、それだけ売れるわけだ、と思わされるわかりやすさと熱さを感じた。


マーケティングの基本として「消費者視点の会社になれば、自ブランドの価値を上げて業績を好転させることができる」ことを挙げ、「日本企業の多くがマーケティングのキャリアを伸ばすような構造ではない」「日本でマーケティングが遅れた理由は、日本の技術志向、規制による競争阻害、終身雇用制などの事情」と、日本でのマーケティングの遅れを指摘。他方、「売れたものが良いもの、という時代に生き残っていくためには、会社はマーケティング優勢で技術力を活用する」「技術力があるのにマーケティング力に問題がある、と自覚することから反撃は始まる」と、日本の将来は逆に明るいと言い切るのは凄い。


そもそも、マーケティングを扱うマーケターについては「マーケターの最初にすべき最重要な役割は『どう戦うか』の前に『どこで戦うか』を正しく見極めること」「先にブランド価値を高めておいて、価格弾力性をできるだけ小さくしておく」「マーケターに向いている特性は①リーダーシップが強い②考える力が強い③EQが高い④精神的にタフ」と考えを述べる。


そのうえで、売れるということについて「『売れる仕組み』は消費者とブランドの接点をコントロールして作る。『消費者の頭の中を制する(自ブランドの認知率を高め、ブランディングする)』『店頭を制する(購入を最大化するため、配荷率、山積率、価格の展開に注意する)』『商品の使用体験を制する(消費者価値を上げる商品開発をマーケティングがリードする)』」と、3つのポイントを挙げる。


戦略、戦術については「戦略的に考えるとは、目的→戦略→戦術の順に沿って大きいところから考えること」「最終的な結果を大きく左右するのは、消費者との最前線である戦術の強さ」「戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する『地雷』を避けるため、そしてできれば市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないかを考えるため」のあたりの記述が興味深い。


日本の特性を「日本という奇跡のような高信頼社会を支えるのは、『お互いに分かち合う』価値観と、日本が豊かである事が柱」「日本人は、情緒的に戦えることで戦術は強いが、情緒がはいり込むことで逆に戦略が弱い」と書いているあたりは凄く共感できる。が、「合理的に準備してから、精神的に戦う」は、実際にはかなり難しいことだ…


理屈っぽいだけかと思うが、さにあらず。「自分起点で周囲を説得し倒して、人を動かすことが重要。自分が信じる正しい方向に、自分以外の全員を説得して巻き込んでいく気概が必要」「目的は、誰かから与えられるものではない。自分自身で考えて目的を提案できるようになっておかないと、自分起点で組織を動かす人間にはなれない。できるだけ目的設定に関与していく姿勢が大切」のあたりは、筆者の熱量を感じる。
そして、仕事への向き合い方として「『好き』な仕事でなければ成功することは難しい」「会社はあなたの強みに対して給料を払っている。強みを伸ばして成功する」「克服すれば自身の強みを大きく活かせる弱点は積極的に改善に取り組むべき。多くの人にとって弱点克服が難しいのは、意識変化と行動変化のタイムラグに耐えられないから。本当に変わりたいのであれば、すぐには変われないことを最初から織り込んで覚悟を決める」のあたりは参考にしたい。


「自分の人生の主役は自分しかいない。失敗を恐れず、目的を持ってポジティブに人生を歩んでいく。そうすれば、きっと我々は自分が思っているよりも高く飛べるはず」この言葉、胸に留め置きたい。