世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】山口義宏「デジタル時代の基礎知識 ブランディング」

今年97冊目読了。インサイトフォース代表取締役の戦略コンサルタントが、「顧客体験」で差がつく時代の新しいルールを読み解く一冊。


わかりやすさを追求しているライトな本、という感じなのだが、やや定義することに追われている感じがして、いいことは書いてあるのだが、なかなか頭に入りづらい。ちょっともったいない感じがするなぁ。


ブランドというものについては「ブランドは私たちの情報処理を簡略化する。膨大な選択肢から無意識に候補を絞り込む」「ブランドは、『識別記号』(文字、音、形、色、におい)と『知覚価値』(カテゴリー、人格、便益、論拠)が結びついた総体」と定義。


ブランド戦略の本質を「ターゲット顧客にこう思われたら選ばれるであろうという価値を決めたら、そのような印象が残るようにすべての顧客体験や施策に一貫性を持たせるよう整えること」とし、ブランド力は「体験の魅力度×体験の量・時間×体験の一貫性」による。「ブランド戦略と事業戦略は中期で考え、マーケティングの『商品・サービス』『広告・PR』『販路・接客』『価格政策』の施策は高速回転させる」ことだと述べる。


ターゲット顧客は「象徴的顧客(ブランドターゲット):ブランドの思想・世界観レベルで強く共感し、理想的ユーザー像として企業とともにブランドを創る層」と「販売拡大先の顧客(セールスターゲット):憧れ、機能性、価格など、様々な理由で購入する売上規模確保のための拡販先となる層」とし「ブランドターゲット選定の観点は『ブランドに共感し、長期的関係のファンとなるか?』。セールスターゲット選定の観点は『売上ボリュームを効率的に獲得できるか?』」が大事だとする。


21世紀においては「求められるのは、『モノありき』から『顧客体験ありき』への発想の転換。消費者が求める理想的な体験を描いてから、その実現のために必要なモノや技術を考える」として「これまでのブランド知覚価値は、『消費者にこんなことを伝えたい』という、モノのスペックやベネフィットなどブランド主語の自分語り。+αで拡張すべきブランド知覚価値は『消費者のお役に立ちたい』という、生活者の願望や課題への貢献など生活者主語の協調的支援」「顧客体験のデザインは①購買行動プロセス②顧客インサイト③体験施策アイデア、のレイヤーに分ける」ことを提唱する。


結果として「ブランド知覚価値は『モノ単体の価値』だけでなく、『連携サービスの価値』や『情報の価値(人との会話)』などの顧客体験の累積」になるので、具体的には「消費者に届きやすくするためには、情報をパッケージングする」「ブランド戦略でのSNSは、真面目で信頼できるだけでは人気が出ない。キーマンの個人アカウントは、リスク面でベストではなくともベターチョイス」というような対処を提案する。


自分のトレーニングの参考としては「勘のよさは情報の統合と検証によって磨かれる」として、洞察のために「人は言動に矛盾がある。その矛盾に気づく」「自分の言動を客観視して掘り下げる」と書いているあたりが使えそうだ。


ちょっと惜しいが、いいことは書いてある。評価しづらい本だな…