世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】海老原嗣生「マーケティングとクリエイティブをもう一度やり直す 大人のドリル」

今年61冊目読了。雇用ジャーナリストにしてニッチモ代表取締役の筆者が、会議、営業、企画、そして夕食の支度にさえすぐ使えるマーケティングの真髄を明らかにする一冊。


畏敬する先達の畏友たる方の本だから、絶対に当たりだろうなと思っていたら、想定通り、本当に素晴らしい良書。


まず、「日本人は、コンセプトというものを『雰囲気』とか『お題目』だと勘違いしている」「日本は技術やアイデアはあるが、コンセプトがない」と厳しく指摘。
コンセプトの重要性については「商品やサービスは乗り物でしかなく、それに積んだ『コンセプト』を顧客に運ぶことが、ビジネスの本意」「会社はユーザーにコンセプトを届けている。『商品』や『サービス』、店舗デザインや接客作法などが一体となって、コンセプトを具現化しているのだ」「21世紀の先端企業は、技術やアイデアは二番煎じでいいから、コンセプトで勝負」と強調。
さらに「コンセプトが辺、それを束ねて面ができる。これがパッケージ。それが時空を超えて連なるキューブがブランドとなる」と言われると、そう考えたことがなかっただけに、かなり衝撃だ…


往々にして自分の主張ばかりする癖があるので、「伝えたいことを中心に据え、それを最適に表す資料をチョイスし、相手の理解の筋道に従ってアレンジする」「あなたは『伝えたい相手』が見えていましたか?その人がどう感じ、どう行動するか、想像していましたか?」は本当に耳が痛い…


クリエイティブな人と凡人の違いを「天才の名をほしいままに、なんでこんな名案が思いつくの?と傍から羨ましがられる人は、思いつき力もさることながら、『想定』『選択肢』『排除』を根気よく続けられることが大きい」「名人はみな、『案出し→取捨選択→筋道発見→適案の再検索』作業が大好き」と読み解くあたりは、本当にすごい言語化能力だ、と舌を巻くばかり。


ビジネスにおける観察の重要性を「競合と比較したときの特色を羅列する。長所でも短所でもかまわないから、ありったけ並べて観察する。そうするとそこに、違いの軸が見えてくる」「『ちょっとした違いに気づく』ことでマーケティングは上手になっていく」と述べるのもわかりやすい。


そして、どう戦うか、については「ミクロでは齟齬はつきもの。マクロで正しいならそれを許す」「『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる』よりも『絞れば強くなる』といビジネス則は重要」「池の大きさばかり見ず、釣り人の数を考え、ブルーオーシャンを狙う」「ビジネスは間口(人数)ではなく、奥行き(回数)をかけた面積だ」とするのも、『流されずに自分で観察し、発想する』ことの重要性を非常に簡便に伝えてくれている。


最後の問いかけも秀逸。「あなたは、どのような存在として記憶されたいですか?」「自身を定義することにより、①努力の焦点が与えられる②生きる焦点が明確になることでそれと整合的な生き方を守り抜く信念や気概も生まれてくる」は、自分の人生のあり方を揺さぶってくる。


すごく読みやすく、それでいて深い。何度も手にし、読み返したい良書だ。