世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】萩原遼「北朝鮮に消えた友と私の物語」

今年104冊目読了。元・赤旗記者としてピョンヤン特派員を務めたこともあるフリーランスの著者が、若い頃の朝鮮人の友との交流から、その皮肉な人生の荒波、そしてそれを招いた北朝鮮及び金日成体制への鋭い批判を事実ベースに書き起こした一冊。

思想的に言うと、「赤旗の記者!?」というだけで手に取りたくない。でも、個人的に非常に尊敬する読書家である佐藤優が薦めているのだから…と読んでみたら、まぁこれが凄まじい。こんなとんでもない事が起こっていたのか。今でこそオープンになっている北朝鮮の数々の「悪事」であるが、その当時はそんなこととは気づかれず(というか、薄々感じ取っていても、身内や友人を北朝鮮に「人質」に取られているので追及できず)、という空気感がひりひりと伝わってくる。今の時代から見ると、後知恵で「なんで、北朝鮮を『地上の楽園』と言われるがままにそんな危険な国に行ったんだ?」と思ってしまうが、当時の李承晩体制による在日朝鮮人への「棄国民」という見方、及び激しい弾圧、という背景が抜け落ちてしまっている。歴史を含め、実際のルポルタージュの力強さを感じる。

そして、ピョンヤン特派員として務める中での生々しい記録は、戦慄ものである。多少の体裁の変化はあるかもしれないが、このような国が21世紀にもなってまだまだバンバン「飛翔体」を撃ちまくっている、かつ韓国はその国にすり寄ろうとしている、という状況が暗澹とした気持ちにさせる。

人類への犯罪ともいえる、この国の存在と行動。それを生々しく暴いている点、非常に興味深い一冊だ。イメージで物事を語ることの危険性も、ひりひりと感じさせてくれる。