世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】茂木健一郎「IKIGAI」

今年8冊目読了。脳科学者の筆者が、日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣「生きがい」について深く考察する一冊。


もともと英語で書いた書物を和訳するという逆輸入版だが、なかなか興味深い。ただ、共感できる部分とそうでない部分がそれなり明確にあるので、少し気をつけて読みたい本だと思う。


筆者は、生きがいについて「<生きがい>を持つことで、成功につながることがあるのは事実だが、成功は、<生きがい>を持つための必要条件ではない。<生きがい>はどんな人にも開かれている」「<生きがい>を持っていることは、幸せで活動的な人生を築くことができると感じる精神状態にあることを指す」「結局人生は、一回しか起こらないことで満ちている。人生の出会いにある一回性の認識とその喜びが<生きがい>という日本語が作られた基礎」と、その力を指摘。
さらに、生きがいと関わりの深い「<こだわり>は本質的に私的なものであり、自分がやっていることへのプライドの表明で、<生きがい>の中心的要素を構成する。<こだわり>は、ものすごく小さな細部を尋常でなく気にする、その方法のこと」とする。


生きがいの特徴「<生きがい>にとって、誰かとつながっているという感覚があること、バランスの取れた食事をしていること、何かに対して信仰心を持っていることは重要」「勝者だけが<生きがい>を持っているわけではない。みんなが強調して踊っている人生という現場では、勝者と敗者は、全く対等に<生きがい>を持つことができる」「<生きがい>を持つことで良いことは、強靱になり、立ち直る力がつくこと」のあたりは、非常に理解しやすいところ。


筆者の述べる<生きがい>の五本柱「①小さく始めること②自分からの解放③調和と持続可能性④小さな喜び⑤<今ここ>にいること」は概ねそうだと思う。③だけ微妙かな。それだと人の目を気にすることになってしまうし、持続を考えると⑤に支障する。


そのほか、原則論として「生産的で創造的な仕事をするためには、朝が一番良いということは、脳の生理状態の知見に照らしても理にかなう」「幸せになるためには、自分自身を受け入れる必要がある」「自分の<生きがい>を追うときは、好きなだけ、自分らしくいればよい」のあたりはシンプルなんだけど、故に難しいんだよな、との念を禁じ得ない。


共感できる部分は多いが、「人生は、首尾一貫性が必要なのだ。一貫性と人生の目的意識を持つことが、最終的に、小さな<生きがい>を輝かせる」は全く共感できない。そんなに人生は単純じゃない、寄り道こそが人生だと思うのだが…