世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中村朱美「売上を、減らそう。」

今年126冊目読了。佰食屋という、従来の経営手法とは全く異なる飲食店経営をする筆者が、その哲学と実践についてまとめた一冊。


筆者は、飲食店について「会社の売上がどんなにのびても、従業員が忙しくなって、働くことがしんどくなってしまったら、なんの意味もない」「食べることは、暮らしの根幹を担っているのに、それをつくっている人たちが満足に休めず、家族と過ごす時間も限られてしまう」と疑問を持つ。
そして、「もう『頑張れ』なんて言いたくない。わたしは『仕組み』で人を幸せにしたい」という願いにも似たビジョンに辿り着く。


経営する佰食屋のマインドとして「『早く帰れる』ことはお金と同じくらい魅力的なインセンティブ」「心の余裕と時間は、ベーシックインカムより前に人生において保障されるべきもの」「誰でもできる仕事をAIでなく、人間がやっているからこそ、仕事はどんどん洗練されていく」「その人の個性や得意なことに名前をつけてあげる。すると、本人すら自覚していなかった自分の特長に気づくことができる」「いつも現場第一で考える。従業員がゆとりを持って楽しく仕事できるような体制を整える。そのために、つねに従業員からの声に耳を傾ける」「会社とは、人の集まり。一人ではできないことをするために会社がある。だとすれば、もっとも優先されるのは人間関係」は、いずれも言うは易く、行うは難し…


ビジネス、生き方の真髄として「なにかを捨てることで、得られるものがある」「『これこそが完璧』と思う気持ちは、おごり。時代が移り変わる限り、つねに理想となる姿は変わっていく」「『制約』はすべてのブレークスルーを生み出す」「自分が幸せかどうか決めるのは自己決定権」「広報は『現場の片手間』でできるほど簡単な仕事ではない。売上に直結する重要な経営戦略の一つ。もっとも大切なのが、商品やサービスの特長を『わかりやすいキーワード』にしてあげること」など、これまた響く知見を披露している。


今後については「総人口が減少し、労働者の賃金も減少し、消費者の可処分所得も抑制され、消費は低迷している。そして、毎年のように災害はおきる」中で「どんな人生を望む人も、『持続可能』な働き方をしたほうがいい」と述べる。


非常に納得性が高いが、本当に実践するのは難しく、考えさせられる。「これまでの苦労がたくさんあるからこそ人に優しくできる人が本当に多い」という言葉を支えに、挑戦するしかない、か。