世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】枝廣淳子「答えを急がない勇気」

今年82冊目読了。大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役、株式会社未来創造部代表取締役社長、幸せ経済社会研究所所長の筆者が、ネガティブ・ケイパビリティを薦める一冊。


枝廣さんの著書だから、安定感のある記載だろうと期待するとおりの内容。スピードの上がり続ける現代だからこそ読むべきと感じる。


現代において「困難な状況にもうろたえず、適切に対処するためのヒントとなるのが、『ネガティブ・ケイパビリティ』」「ネガティブ・ケイパビリティとは『不確実性を許容する高度な能力』」と、まず定義をする。
そのうえで、「本能的にも時代状況的にも、ますます『ぱっと理解し、ぱっと反応する』ことを求められる社会に、私たちは生きている」「社会が便利になればなるほど、答えでも情報でも手軽に即時に差し出してくれるようになればなるほど、考え続ける・考え抜くためのネガティブ・ケイパビリティが重要なスキルになってくる」と、逆張りにも思えることを提案する。


AIが発達する世の中において「人間にしかできない能力は、ひとつは創造性。これには私たち人間入っている入っている。もう一つ、人間にしかできないといわれているのが、社会的知性(洞察、交渉、説得、他者への支援とケア)を用いる業務」という問題提起はさすがだと感じる。
そのうえで「新しい思考・認識の出現を待つために立ち止まる」「ネガティブ・ケイパビリティは、その都度、相手や状況によって揺れ動き、不安定で、再現性も予測可能性もない状況の中に居続ける能力。『全停止』ではない。AIが経済や社会の中で主流となってくる時代だからこそ、人にしか発揮できないネガティブ・ケイパビリティが重宝されるようになるのではないか」と、人間『しかできない』ことに言及するのは流石。


高速に動く現代において、どう生きれば良いか。「『散らしてしまいたい』という衝動と、それに駆られて動いてしまいそうになる自分を抑える『器』の2つが、ネガティブ・ケイパビリティ発揮のメカニズムのキーワード」という提案は非常に意義がある。また、日ごろの練習として「根気強く考え続けることを意識する。違和感・不快さ・居心地の悪さを感じたら、立ち止まる。人を既成概念や思い込みに当てはめていないか?と自問してみる。『不思議』を見つける。森や海岸を歩いてみる、自然に触れる。ペースを落とす。振り返りの習慣をつける」は、留意したいところ。「レジリエンスを支える力は①元気②しなやかさ③へこたれない」も、わかりやすい。


困難なVUCA状況に向き合うにおいては「『記憶、欲求、理解無しに』現在の瞬間に働きかけるネガティブ・ケイパビリティは、習得も実践もはるかに困難だが、そのほうが重要」「本当のものは答えが出ない」のあたりが本当に大事だと感じる。考えさせられるし、その意義がある、と感じる一冊