今年41冊目読了。作家・演出家・映画監督の筆者が、連載エッセイを通じて現場で人間観察をしてきたことをまとめた一冊。
鴻上尚史のエッセイは視点が独特かつ鋭いので楽しい。そして、この本も得意の洞察の深さが活躍する。以下、気になったフレーズ。
「シンパシーは『同情心』。思いやりとか慈しみの心。エンパシーは『相手の立場に立てる能力』。大切なことは、相手の『事情』を考えられること。そして、能力という限りは、それを育てることができる」
「英語を学ぶことの予想外の利点があるとしたら、それは、文化的に成熟しやすくなるということ。バイリンガルを目指すということは、違う文化を知るきっかけになりうる」
「根拠を論理的に説明できない人ほど、『世間がなんと言うか』とか『みんな言ってる』とか『ご近所に恥ずかしい』などと言う回数が増える。実際、このフレーズは、ものすごく便利で、自分のすべてを隠してくれる」
「戦争は『善意と善意の戦い』。お互いが自分達の行動を善意だと思っている。この戦いは必然であり必要があり、それは正当だと思ってお互いは戦争を起こす」
「人は自分の持っている構図からズレたものを見たり、体験した時に笑う。本当の笑いは、その人の構図、つまり、世界観や人生観そのものを揺さぶる力を持っている」
「人は、『マインドコントロール』が強ければ強いほど、現実を、自分が『マインドコントロール』されたように変えようとする。そうしなければ、自分が存在しなくなるから」
「話し言葉には、『情報を伝える』と『イメージや感情を伝える』という二つの機能がある。画面越しの会話では、話し言葉という『情報』はちゃんと伝わる。でも、『イメージや感情』はなかなか伝わらない」
「本当の才能勝負の時も、もちろんあるが、それは、百回の勝負のうちほんの数回で、それ以外は、体力と人柄なんだ」
「自分の想像力で他人の感情や状況を判断してはいけない。たいていの場合、当事者の苦しみは、自分の想像力の結果より、はるかに深い」
「自分がいつもいる位置から少しずれるのは、脳にも体にもいい」
「才能とは夢を見続ける力のこと」