世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】菊池洋匡「『しつけ』を科学的に分析してわかった小学生の子の学力を『ほめる・叱る』で伸ばすコツ」

今年11冊目読了。かつて算数オリンピック銀メダリストになった中学受験伸学会代表が、子どもに自信を生み、好循環を生み出す最初のきっかけを親が踏み出すことを提唱する一冊。


いろいろと心理学系の本を読んでいるので、「様々な心理学や社会学の要素を子育てに寄せ込んだ」ということがよくわかる。目新しいものはないが、わかりやすさという点が優れているんだろうな。


子どもの客観視のサポートのために「人はイメージに引きずられて物事を判断し、決断する。子どもの中に勉強や自分自身に対して、良いイメージを持てるように働きかけよう」「自己コントロールのためには、自分を客観視できることが必要。しかし、子どもは自己客観視する力がまだ育ち切っていない。正しい情報を鏡のように返すことで、子どもの『心の監督』が正しい判断をする手伝いをしよう。子どもが悪い行動をしてしまっても、悪気があると思わないようにしよう」「子どもは自分の成長に気づきにくい。そのため、『どうせがんばってもムダだ』と思ってしまいがち。だから、子どもの代わりに『前と比べてどう変わったか』『何が今回の成功につながったのか』を親が探して示す」のあたりがポイントと感じた。


理性的行動を促すコミュニケーションのコツとして「子どもの成長を促すためには、親が言って聞かせるのではなく子どもに話をさせる。会話の中で親が話す割合を3分の1以下にする」「子どもに納得感をもたせるためには、『事実→心情→評価→方針』の順で話をするのが効果的。『○○すべき』という評価は本人に任せ、我々は『○○である』という事実の描写にとどめよう。そして、子どもの心情は受け入れる」「復唱をすると、子どもは『聞いてもらえている』という安心感を抱き、納得感も得やすい。また、おかしなことを言った時には自分で気付くきっかけにもなる。子どもが言ったことを、そのままオウム返しするようにしよう」は、子育てのみならず、メンバー指導でも大事なところだ。


子どもにやる気を出させるために「内発的動機づけ(自分の中からのやる気)は、『自律性+関係性+有能感』でできている。自律性を高めるために、自己選択の機会を与えよう。関係性を高めるために、子どもの話をよく聞こう。有能感を高めるために、実力相応の課題から始め、できるたびにほめよう」「話すときには『条件つきいいよ』『ワン・メッセージ』『I(アイ)メッセージ』の3つのコツを実践しよう」は、そもそもコミュニケーションにおいて留意すべき中身。


子どものマインドセットのために「ほめるのも叱るのも、すべては『行動』に対して行う」「行動を評価しようとしたら、子どもの行動を日々よく観察しなければいけない」「ほめる・叱ることで、どんなメッセージを子どもに伝えているのか考える。結果だけをほめても再現性はない。良い行動を見つけて認めてあげることで、今後も継続できるように導こう。叱るときも、結果だけをただ叱るのでは子ども任せ。どんな行動が結果の原因なのか振り返り、改善策作りまで手伝おう」が大事と指摘するあたりも納得。


親のマインドセットのために「『叱る』より『ほめる』ほうが、モチベーションが高まり、良い行動が増える」「怒りに任せた感情的な対応は、問題を解決することにはつながらない。怒りの感情がわいたときには、反射的に行動せず、まずは時間を稼ぐ。それができるようになったら、怒りの裏にある本当の感情を見つめ、その根本原因になっている自分の思いと向き合う」「ほめるか叱るかを考えるのではなく、ほめることを決定事項にしてしまい、何をほめるかはあとから考えて探す」は、本当に難しい…実践するには訓練あるのみ、か。


このほかにも「子育ての軸は『成果主義よりも行動主義』『才能よりも努力』」「努力を積み重ねれば性格も能力も変えられるが、すぐには変わらない」「子どもに話をさせるほど、子どもの脳の成長は早くなる」「『自律性』『関係性』『有能感』が大切なのは、親にとっても同様」などは、親として考えさせられる。一読の価値はあるなぁと感じた。