今年71冊目読了。スピード感あふれる小説を書くのが持ち味の筆者の出世作。
もともとは、マリアビートルを読みたかったのだが、書評を見ると「グラスホッパーを先に読め」という記載がやけに多いので、こちらを先に読んでみた。ネタバレ回避で結論は書かないが、殺し屋と復讐者の3任が織り成す不思議な流れが一つに収斂していく様は、まさにジェットコースターに乗せられたような読書感。なるほど、これは面白い。経験できない世界観を見せつけられたという点で、楽しめた。
気になった言葉を抜き出してみる。「世の中は、善悪じゃないんだから。ルールを決めてるのは偉い奴らでしょ。そいつに保護されちゃえば、全部問題ないってこと」「八方ふさがりになると、人間というのは爆発するんだ。それならば、どこかに、道をつくってやればいい。手がかりを残せば、必死に辿ってくる。」「生贄を差し出されると、理屈に合わなくても、それ以上責めるのが面倒臭くなる」あたりは、世の中の本質を突いているな、と思う。
人間の特性についても「あれこれ策を弄して、必死に頭を悩ますのは人間の悪しき点だ」「人もごちゃごちゃしたところで暮らしていたら、おかしくなる。都会は特に、穏やかに生きていくほうがよほど難しい」のあたりが興味深い。
究極的に共感するのは「世の中に酷くないことってないでしょ?生まれた時から、死ぬのが決まってるのがすでに酷いんだから」という言葉。確かにそうだな。ならばこそ、いかに生きるか…