今年109冊目読了。ベストセラー作家が描き出す、短編小説の連作が織り成す不器用な駆け引きの数々。
最近ハマっている伊坂幸太郎ゆえに読んでみたが、これもまた面白い。いろいろなところで、過去の登場人物がからんでくるので、何度も前の「伏線」を読み返すことになるが、これもまた心地よい。本当に、緻密な筆致が楽しくて、かつ見事に収斂するのが気持ちいい。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き出す。それにしても、これは読んでいて楽しい本だ。
「できていないけれど、それにしても、頑張ろうという気持ちはある。それに比べて、あなたは元から、頑張ろう、ちゃんとやろう、という気持ちがないでしょ」
「気持ちが沈んでいる時は、まず眠るしかない」
「彼女と付き合ってから、俺、謝ってばかりだったからさ。まあ、実際、俺が失敗したり、うっかりしていることばっかりだったから謝るのも当然だったんだけど、それにしても、もう疲れたのかもしれない」
「三十過ぎた大人の考え方を変えるのは、モアイ像を人力で動かすくらい難しい」
「人のために何かをしたい、という思いやサービス精神は間違っていない。それは理解できる。一方で、そういった態度に傲慢さを感じている自分もいた」
「自分が正しい、と思いはじめてきたら、自分を心配しろ。あと、相手の間違いを正す時こそ言葉を選べ」
「昔のものが全部悪いってわけじゃない。いいものもあれば悪いものもある。現代の流行や常識にだって、いいものと悪いものがある」