今年110冊目読了。今やベストセラー作家となった筆者のデビュー作。
最近、すっかり伊坂幸太郎にハマっているのだが、それにしてもデビュー作からこれだけ凄い世界観を描けていたのか…驚愕するしかない。
未来を見通せる案山子、かつての同級生で最悪な性格の警察官、など、なんとなくその後の伊坂ワールドに繋がるキャラが出ていてなるほどと感じるが、それにしてもグイグイと引き込まれるのはいつものとおり。ぜひ、一読をお薦めしたい。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き書き。
「果たして何でも手に入ることが幸せなのだろうか。何でもたやすく手に入る世界、を想像してみる。それから顔をしかめる。退屈の蔓延が、頭に浮かんだ」「人間は慣れる動物である。そうして、飽きる動物である。だらだらと生きる。諸悪の根源とは、そのあたりにあるのではないだろうか」
「問題の先延ばし、これは人間だけが持っている悪い性分なのかもしれない」「自分の中に欠如感があるから、外部から与えられるものを求めているんだ」
「僕は、勧善懲悪の物語が好きだ。天網恢々疎にして洩らさず、という諺だって、好きだ。なぜなら、現実はそうじゃないからだ」「偽りが嫌いだ、と公言する人間を、僕はさほど信用していない。自分の人生をすっかり飲み込んでしまうくらいの巨大な嘘に巻かれているほうが、よほど幸せに思える」
「人の一生てのは一回きりだ。楽しくないとか、悲しいことがあったから、なんて言って、やり直せねえんだ。だろ。みんな、一回きりの人生だ。わかるか?『一回しか生きられないんだから、全部を受け入れるしかねえんだ』」「人に価値などないでしょう。人の価値はないでしょうが、それはそれでむきになることでもないでしょう」
「先のことなんて知らないほうが楽しいんだ。もし誰かに聞かれても『面白くなくなるよ』って言って、教えないほうがいいさ」