今年134冊目読了。辛い過去を抱える兄弟が、連続放火とグラフィティアートの不思議なつながりに、遺伝子のルールが絡まっていく不思議な小説。
これまた安定の面白さだが、自分としてはやや面白さが劣るような気がする。ラストにもモヤモヤ感が残るし、いつものスカッとする伊坂幸太郎の気持ち良さにやや欠ける。とはいえ、これだけの秀作を数々出せることが凄いのだが…
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き書き。
「人を公平に扱うものは大抵一目置かれる」「勤勉な者が得るのは、報酬と、チャンスと、信頼だよ」
「みんな、という不特定多数の見方を背負うのはずるいな」「多数決と法律は、重要なことに限って、役立たずなんだ」
「まっすぐに生きていこうと思えば、どこかで折れてしまう。かと言って、曲がれ曲がれ、と思ってると本当に曲がる」
「セキュリティの高さは、手続きの面倒くささとほぼ同義だ。端末操作のアクセスログをいくら詳細に取得しようとも、悪巧みを図る者はいくらでも抜け道を探し出す。彼らは面倒くさいことを嫌がらない。割を食うのは、無害で無知な一般人だけだ」
「生きるってことはやっぱり、つらいことばっかりでさ、それでもその中でどうにか楽しみを見つけて乗り越えていくしかない」
「自分が考えているようなことは、別の人間も考えているってことだ。大抵の企みは自分に返ってくる」
「人は目に見えるもので簡単に騙される。一番大事なものは目に見えない、という基本を忘れているんだ」