今年3冊目読了。ベストセラー作家のデビュー2作目にして、非常に完成度の高い群像小説。
2023年初の伊坂幸太郎。やはり安定の面白さで、どこからこれだけの発想が出てくるのか?と感嘆するしかない。そこここに、人生観、生きるうえで大事なメッセージが散りばめられているのもまた良い。
「ラッシュ」という日本語表記に対し、
lash:むち打つこと、部品の遊び。激しく動かす、濫費する
lush:豊富な、景気のいい、華麗な。酒、のんだくれ
rash:無分別な、軽率な、せっかちな。発疹、吹き出物
rush:突進する、殺到する、むこうみずに行動する。突撃、忙殺、ご機嫌取り
という4つの意味が持てることを使って、5人の人生の交錯を描く群像劇は、さすがとしか言いようがない。最後に見事に収斂する様も、非常に気持ちいい。「あれ?これ、どこかに伏線があったような…」と、思わずポイントを二度読みしてしまった。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き書き。
「人生はきっと誰かにバトンを渡すためにあるんだ。今日の私の一日が、別の人の次の一日に繋がる」「優しいって字はさ、人偏に『憂い』って書くだろう。あれは『人の憂いが分かる』って意味なんだよ、きっと」
「精神カウンセリングとは人を癒すものだ、と信じている人間は多い。カウンセリングは、歪んで走っている車の軸を、騙し騙し、真っ直ぐにするだけであるのに」「日本人は都合のいい時だけ神をでっち上げて、祈る」
「正義だとか悪だとかそういうのは見方によって反転しちまうんだ」「『未来』は闇雲に歩いていてもやってこない。頭を使って見つけ出さなくてはいけないんだ」「人は誰かに忠告されたい。同時に誰かにアドバイスしたいと思っている。そういうものだ」
「落ち着けよ。落ち着けば人間大抵のことはできるんだ」「人生については誰もがアマチュアなんだよ。誰だって初参加なんだ。人生にプロフェッショナルがいるわけがない。はじめて試合に出た新人が、失敗して落ち込むなよ」