今年139冊目読了。一週間の調査の後、対象者の死に可否の判断を下すという『死神』の目から人間社会を描き出す不思議な小説。
伊坂幸太郎らしい、安定の面白さ。疲れていても、なんとなく元気が出る。死を描いているにもかかわらず、そんな心境にさせてくれる不思議な小説。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き書き。
「人の死には意味がなく、価値もない。つまり逆に考えれば、誰の死も等価値だということになる」「人間というのは実に疑り深い。自分だけ馬鹿を見ることを非常に恐れていて、そのくせ騙されやすくて、ほとほと救いようがない」
「真剣な発言をユーモアだと誤解されるのは、不本意だった。だいたいが、どのあたりが可笑しいのか、自分が理解していないものだから、次の会話に生かすこともできない」
「人間は不思議なことに、金に執着する。金のためであれば、たいがいのことはやってのける」
「人間というのはいつだって、自分が死ぬことを棚に上げている」「人間は、幻滅を感じるのが、つらい」「人間の生きる歩みはいつだって、えっちらおっちらだ」
「人間は、何を見ても人生と結びつけるのだ」「一喜一憂してても仕方がない。棺桶の釘を打たれるまで、何が起こるかなんて分からないよ」
「好きでもないことを必死にやる。仕事とはそういうものだ」