世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】小池陽慈「”深読み”の技法」

今年72冊目読了。河合塾現代文講師の筆者が、世界と自分に近づくための「深読み」の技法を解説していく一冊。


これは自分としても反省させられる…本を読んでは要点を抜き書きしているのだが、それが真っ向から否定されるのはなかなか耳が痛い。


そもそも、冊数を読むことにパワーをかけている自分としては「時にはその一文、いや、その一単語に徹底的にこだわり、それを”深く”読むために、途方もない時間をかける。そうした時間が、思考を錬磨し、その人の思想を、あるいはその人そのものを形作っていく」「<精読>と<俯瞰読み>の往還。自分にとって大切な文章に関しては、ぜひ、こうした読み方を実践したい」という言葉が、まずグサリと突き刺さる。
そして、「要約とはつまるところ、情報価値の高くない要素を省いたり端的な言葉にまとめたりし、抽出した『大切なところ』を、筋道を明示しながらつなげ、文章にするという作業」というのは、ブログで書き記している自分を全面否定されているようで、痛い痛い…


もっとも「読めない、と思ったら躊躇なく閉じ、次の本に進むという読書法」は身につけているし、「一冊の本との出会いは、無数の本への”開かれ”という可能性を有している」「たった一冊の本との出会いが、その人の人生すら変える可能性がある」というところには非常に共感する。


また、「語彙を増やすには、文章を読む過程で出会った未知の語句について、こまめに辞書を引く」は実践しているし、あまり外国語は得意ではないものの「物理的に世界は一つしかなくとも、そこにどのような意味を与え、どのように分節するかは、各言語それぞれによって異なる!」も、実感としてそうだな、と思う。ときどき、翻訳書は訳が悪い場合もあり、それも見抜いたことがあるし。


とにかく、自分の読み方を反省するにはもってこい。多読に寄りすぎている自分は、こういう「立ち止まる読書」もすべきなんだろうな…ダメージを受けるというのは、それだけ良書だということだな。


なお、巻末の土井諭による「読解スキルアップシート」がかなりパンチ力がある。「対比は読解の要」「『こそ』『まさに』は筆者のテンションのたかさをあらわす」「義務的表現は読者をひきつけることば」「提案表現は読者への共感を求めることば」「反語表現は極度の強調表現」「打ち消した後が肝心」「疑問文は”疑問の形を装った主張”」は、読み進めるうえで使えそうだし「常に『たとえば…』と問いかけながら読む」「背景知識を活用しながら読む」などは実践していきたい。


読みやすいわりに、読み応えある良書。これは一読をお薦めしたい。