世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】佐渡島庸平、石川善樹「感情は、すぐに脳をジャックする」

今年73冊目読了。コルク代表・編集者と、予防医学研究者の筆者が、「自分の感情をちゃんと認知できているか?」ということを深く問いかけてくる一冊。


佐渡島庸平の本は非常にわかりやすくて精度が高い、という優れモノなのだが、この本は実践を通じながら理解度を高めていく、という本なんだろうな。


なぜ、感情認知が大事か。「自分の感情を細かく認知できるようになると、あらゆるアウトプットが確実に変わる。嫌なことを『最悪』という解像度の低い表現で済ませてしまっては、感情の違いを理解することも、それ以上アウトプットすることもできないから」という定義から入り、シンプルに「感情は、すぐに脳を乗っ取る」「感情を知っていると、人は幸福になれる」と言われると、もう反論の余地がないように感じる。


そして「生まれた感情にはすべて意味があるし、どんなに抗っても感情と脳を切り離すことは不可能。大切なのは『あらゆる感情は、自分の行動や意思決定に影響している』と、まずは受け入れること」というあたりは、傾注しているU理論にも一脈通じるものがあり、すんなり入ってくる。


感情認知をトレーニングするには「①自分の感情を客観視するために、周囲からフィードバックをもらう②自分の行動や心理を振り返ることで、感情の解像度を高める」の2つが大事である、と説く。
忙しく、かつスマホに支配されている現代人である自分にとっては「『退屈の中に自ら入っていく。退屈な時間を過ごす』ということが、感情の波に気づけるようになるために、唯一の方法」「わかりやすい刺激を求めるよりも心の機微や変遷を楽しめれば豊かに生きられる」は、かなり驚き。これは意識したい。


感情を理解するサイクルは「①【認知】:自分がどのような感情を抱いているのかを、分解・認識する②【受容】:認知の過程で見えてきた感情を受け容れる③【選択】:そのうえで、どのような選択肢があるかを考え、採用する」が大事とする。それぞれのフェーズでは
・認知では「感情の振り返りを習慣にする」
・受容では「すべての感情には価値がある、という意識を持つ」
・選択では「他者に意識を向けるのではなく、自分にできることを探す」
ことが重んじられている。


そのほかには「『コト消費』とは感情に対価を払うこと」「『~では?』の会話だと、情報のマウンティングが始まる。『ヒットマンガとは?』のように『とは』で会話をすると、わからないことを追求しようとするから驚きが生まれやすい」のあたりが心に刺さる。


いつかは「『なる』と『する』を手放して、とにかく一緒に『いる』を続けていると、自然と『する』と『なる』が生まれる。幸せとは、『する』を手放した状態なのではないか」という次元に達したい。そのためにも、『プルチックの感情の環』を使って、自主トレを繰り返していきたい。


さらりと読めるように思えて、実はこの本は相当レベルが高い。何度も読みたい、と思わせる良書だ。