世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】川島隆太「『本の読み方』で学力は決まる」

今年126冊目読了。東北大学加齢医学研究所教授の筆者が、脳と読書、脳と読み聞かせの関係に迫る一冊。


元々興味のある新書だったが、中身はペラッペラ。筆者がニンテンドーDSの「脳トレ」を監修しているあたりで、あまり深みがないかな、とは思ったが…


結論としては「読み聞かせをすると、子供達の脳は単に声を聞く反応を示すだけではなくて、感情や情動の脳が働く。読み聞かせをしている大人の脳は、単に本を読む反応を示すだけではなくて、コミュニケーションの脳が働く。読み聞かせは親子の極めて良質なコミュニケーションとなり、子供達の心が安定し、親への信頼と愛着が増し、その結果、親の子育てストレスがぐっと軽くなる」。だから、子供のために、読み聞かせで読書習慣をつけよう、ということ。この結論の補強ばかりで、「そんなの体感としてわかってるよ」という気持ちがあるから、とても薄く感じてしまう。


警告として「2時間以上勉強しても、ほとんど勉強しないが読書はする子供達と同じ成績になってしまう」「多くの子供達は小学校から中学校に進学したところで読書をやめてしまう」「スマホの使用時間が長いほど、読書習慣のない子供の割合が高い」「睡眠不足は脳の機能の低下のみならず、脳の発達自体にも影響がある」「読書や勉強を頑張ってせっかく身につけた(つもりになっている)知識も、しっかりとした睡眠によって記憶の定着を図らない限りは学力という結果には結びついてこない」あたりを指摘するが、どれも特に目新しいものはない。


筆者の「速読は、本の要旨や概要をすばやくとらえたい時など、状況や目的に応じて取り入れる」「本をダラダラ読むのではなく、内容や要点を記憶しながら集中して読み進めることで、脳の司令塔である前頭前野の活性化につながる」という指摘どおり、サクサクと読み飛ばしさせてもらった。結果、20分ほどで、ここのメモ程度のレベル。買って読む価値は全くないな。
「音読は、黙読に比べて多くの領域で脳活動が生じる」「読書をする時には可能な限りスマホの電源は切って、目に入らないところに隔離することが、読書の効率を上げるために非常に有効」のあたりも、改めて言われるまでもない。


子育てにおいて「親が子供をほめる頻度は、子供の性格と一定の関係がある。特に関係があったのは、良識性と知的好奇心」は留意したいが、新たな発見がなく、退屈な本だったなぁ…

【読了】三谷宏治「戦略読書」

今年125冊目読了。金沢工業大学虎ノ門大学院教授、早稲田大学ビジネススクール客員教授グロービス経営大学院客員教授を務める筆者が、オリジナル人材になるための読書法を余さず述べる一冊。


なぜ、読書をするのか。「日本人の読書についての問題は、戦略うんぬんよりまずは『量』。どれだけ読むか、こそが問題」「人の体が食べるものからできているように、人(の精神)は読むものからできているのだ」とし、この本の目的を「①自らの読書に戦略を持ち込み②スキルと経験を効率よく得て、自己を改造し③量産機にならず、オリジナリティのある存在(量産機改造型試作機)になる」「読書で『想像力』『批判的思考力』『メタ認知能力』を鍛えて『自由になる』」「幅広いジャンルの本を読むことは、新しい発想を生み出すことにつながる」「1冊の本から、新しく自分の身につけられる習慣やスキルなど、せいぜいひとつか2つ」とする。


読書戦略については「読書という活動を左右するのは、一義的には『時間配分』」「読書生産性=読書から得るもの÷かかった時間」とし、読書をセグメント化することを提唱。「●ビジネス基礎:少数の古典をじっくり読む。応用読書の基礎を作る ●ビジネス応用:成功・失敗事例やファクトのみをピックアップし、新しいコンセプトやフレームワークの学習は最小限にとどめる。どうせ使いこなせないから ●非ビジネス基礎:ヒトやコトの本質に迫る本を選んでじっくり読む ●非ビジネス新奇:売れたものや信頼する人のオススメ本を斜め読み」と分類したうえで、ポートフォリオごとに説明する。
「ビジネス基礎:読書方針は、自分が今関わっているビジネスの主要テーマごとに1~2冊、古典とされている本を読む。熟読玩味し、内容を理解する。資源配分は、1冊あたり10時間以上かかってもかまわない。すべての基礎になるので、読破するまではこれらに集中する。ただし10冊を超えないこと」
「ビジネス応用:読書方針は、自分が今関わっているビジネスの主要テーマごとに10冊程度、人気の高い本を読む。基本的には斜め読みでファクトの収集に努める。資源配分は、1冊あたりどれくらいかけるか、最初に見究める」
「非ビジネス基礎:読書方針は、自分が今関わっているビジネス以外の領域の本を読む。自然や人の本質を描こうとしている本であること。資源配分は、自分が楽しめる本を、ビジネス系とのバランスでどんどん読む。1冊当たりどのくらいかけるかは、自由」
「非ビジネス新奇:読書方針は、自分がこれまで読んだことがないような領域やテーマの本を読む。当たりがあればその筋の深掘りをする。資源配分は、1か月に1冊で十分」


また、上記ポートフォリオに加え、発見型読書の視点として「①過去や他業界と『対比』して大局観を持つ②これまでの当たり前を覆した『反常識』を見つける③徹底的に『数字』にこだわる④人より『一段深く』まで調べる⑤得たものはちょっと『抽象化』して考える・覚える」と提唱し、一段深く調べる方法として「①キーワード検索して20ページ分くらい斜め読みする②Wikipediaは英語版も読む③出典元の記事・論文も読む」を挙げるが、これはけっこう大変だよな…


読書のみならず、心構えとして「数字を見逃さない。特に『重み』と『差』に着目せよ」「あるものでなく、ないものに着目する」「思考とは『拡げる』ことと『絞る』ことの2種類に過ぎない」「ものごとを印象深く伝えるには、バラバラと素のまま相手に投げつけてはいけない。簡潔なネーミングが必須」のあたりは非常に参考になる。


基本的に、筆者は人間洞察が鋭い。「ヒトの能力は、言葉・論理・知識」「ヒトが言語で思考し、その言語が文字という図表で表されるがゆえに、読書という行為はヒトの脳を鍛える最高のトレーニングのひとつ」「知的活動は4階層。①素の情報であるデータ②それを整理整頓したインフォメーション③そこから意味合いを引き出したインサイト④それらを統合・抽象化してつくり上げたコンセプト」「コミュニケーションとは、膨大な『前提条件』の上で成り立つ、極めて精妙なガラス細工」などは、その際たるところ。


親としての心構えも勉強になる。「進化の反意語は停滞。文化停滞の打破には『教えすぎない』こと」「親にできることは、子どもたちが遠慮なく戦えるように、後ろで受け止め応援し続けることだけ」は、まさに然り。


分厚さのわりには面白く読めてオススメ。しかし、最後に435冊ものブックガイドがあり、これが重たい。また読みたい本が爆発的に増えた…嬉しいやら哀しいやら。

【読了】細谷功「自己矛盾劇場」

今年124冊目読了。ビジネスコンサルタント、著述したの筆者が、「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する一冊。


漫画やイラストが入って、とてもわかりやすく、読みやすい。かなり難解な「認知の限界」の話を、面白く理解できる。


自己矛盾の特徴を「①自ら気づくことはきわめて難しい(が、他人については気づきやすい)②気づいてしまうと、他人の気づいていない状態が滑稽でたまらない③他人から指摘されると、強烈な『自己弁護』が始まる」「抽象度の高低というメタ視点の有無と、情報量の多寡の両方が関わる」「主観が支配、近くから見る、矛盾だらけ、バイアスの塊」「本来、他者(という自分の外側)から表現されるべきことを自ら言ってしまう」と指摘する。


人間の陥る罠として「他人のことは一般化して見ることができるのに、自分のことはすべて特殊であるように思える」「抽象化によって個別事象を知的体系としてものにしてきたが、それが自己矛盾を起こす」「近くのものは特殊に見え、遠くのものは大くくりにしたがる(しかできない)」「自分が可愛いから自己矛盾に陥る」などを挙げる。


では、どうすれば良いか。「メタ視点で見ればたいして知識もないのに『知っている』と勘違いしない」「他人の言動が気になるとき、実はそれは自分のことではなかったかと考えてみる」「他人について具体的レベルで意見するのは無知の無知。抽象化した教訓を引き出す癖をつければ、抽象化のトレーニングになる」のあたりは、やるのは難しいが、故に取り組む価値がある。


自分が間違いだらけなのは、この本の自己矛盾事例を読むたびに痛感するが、「人間は失敗から学ぶことのほうが多いから、いちいち自己矛盾を気にしていたら生きていけない。『過去の自分と今の自分のダブルスタンダード』は成長の証」というコメントを救いにして、頑張るしかない。


参考になったのは「真似そのものは有益。問題はどのように真似をするか。具体性の高い真似はパクリ、抽象度の高い真似はアナロジーであり、抽象化思考やそれに対応する知の発展に大きな役割を果たしてきた」というところ。アイデアって、こういうことなのかもしれないな。

【読了】呉座勇一「陰謀の日本中世史」

今年123冊目読了。国際日本文化研究センター助教の筆者が、中世の有名な陰謀とその原因を述べる説、そして陰謀論の法則を明らかにする一冊。


これは実に興味深い。個別の陰謀に関する読み解きの深さもさることながら、その法則性には唸ってしまう。


そもそも「人が陰謀論を信じるのは、因果関係の単純明快すぎる説明による」「陰謀論に引っ掛からないためにも、何が陰謀で何が陰謀でないかを見極める論理的思考力を身につける必要がある」との指摘は誠に至当。


陰謀研究で留意すべきこととして「加害者と被害者の立場が実際には逆である可能性を探る」「推測を重ねる前に、史料を素直に読む」「陰謀の難点は、秘密裏に遂行しなければならないため、参加者を限定せざるを得ない」「軍記物の制作意図は、そのクライマックスに最も鮮明に表れる」というのは、確かにそうだな。


陰謀論の特徴としては「最終的な勝者が全てを予測してコントロールしていたと考える」「大きな結果をもたらした大事件の原因を考察する際、結果に見合うだけの大きな原因を求めがち」「論理の飛躍、立場の逆転」「事件によって最大の利益を得た者が真犯人である」「起点を遡ることで宿命的な対立を演出する」などとし、疑似科学との類似性として「①反証不可能生②検証への消極的態度③立証責任の転嫁」を挙げる。


具体的史実についての指摘も「王家や摂関家における家督争いは珍しいことではないが、それが武力を伴った点に保元の乱の画期性がある」「後白河の行動を細かく検討してみると、長期的視野に基づく戦略的な思考を見出すことは全然できない。判断が常に場当たり的で、ほとんどが裏目に出ている。にもかかわらず生き残れたのは、単に彼が至尊の地位にいたからにすぎない」「初の武家政権を樹立することになる頼朝には、手本がなかった。彼は常に試行錯誤を迫られたのであり、将来を展望台することは極めて困難だった」「足利尊氏は実力と人気があったから、たまたま将軍になっただけ。北条氏からの離反は一種の自衛行動であり、やむにやまれぬ選択。後醍醐を裏切る形になったものの、尊氏は後醍醐にそむく意思を持っておらず、後醍醐を終生尊敬していた」「義政は義視中継ぎ案で事態を収拾しようと考えていた」「細川氏と山名氏の間には畠山問題以外、深刻な争点はない。応仁の乱の原因は将軍家の御家騒動ではない」「本能寺の変は、光秀が突然訪れた好機を逃さず決起したという突発的な単独犯行。光秀の戦略を根底から覆したのは、秀吉の『理外の理』。このまま手を拱いていては光秀の天下になってしまうと危機感を抱いた秀吉は、一擲乾坤を賭した。確実に成功するという安全で合理的な策を実行すれば勝てるほど、戦国時代は甘くない」「西軍の大坂城占拠と『内府違いの条々』によって、家康は絶体絶命の危機に陥った」など、かなり目から鱗


世の中は、複雑怪奇で、そんなに単純化できない。「勝負というものは、双方が多くの過ちを犯し、より過ちが少ない方が勝利する」という事を肝に銘じ、簡単に結論に飛びつかない姿勢は、歴史検証のみならず、現代を生きるにおいても大事な姿勢だと感じる。歴史好きにお薦めの良書だ。

【読了】鈴木規夫「人が成長するとは、どういうことか」

今年122冊目読了。社団法人Integral Vision & Practice代表理事の筆者が、発達志向型能力開発のためのインテグラル・アプローチについて読み解き、人の本質的な成長の実現を提唱する一冊。


あまりの分厚さに怖気付き、あまりの難解さに絶望感を覚える。しかし、大事なことが書いてある感触は満々。これは、凄い本だ。


「新たに『何か』ができるようになるという『Doing』の領域の成長だけでなく、それらの行動をしている主体である個人の『Being』そのものを変化・変容させることが求められ始めている」「世界の複雑化に対応するためには、関係者の内的な成長や成熟が必要となる」


「発達とは単純により幸福になる事ではなく、それまでには経験することができなかったより質的に高い光と深い闇を経験できるようになるということ」「『インテグラル』という言葉には『全体の構成要素として必要なものを見究めて、それらの統合を志向することで、その取り組みの価値や効果を高めようとする』という意味が込められている」「人間の発達とは、世界の複雑性をよりありのままに受容・尊重することができるようになるプロセス」「発達とは究極的には人為的に起こせるものではなく、それは『起こる』もの」「成長や発達と言われるものが本質的には利己性という人間の本性と対峙し、それを他者の視点を取得することを通じて克服しようとする力学も内包している」


「この世界をいかなる場所として把握するのかに応じて、そこにおいて自己にいかなる役割や責任が課されているのかに関する認識も大きく変化することになる。そして、その結果として、われわれが経験することになる心理的な葛藤の内容もおのずと変化する」「自らの生きる時代や社会に流通する価値観や物語や世界観を無批判に受容して、それを基盤として人生を生きるのではなく、そうしたものに影響され、洗脳され、条件づけられた状態を少しでも克服し、そして、自分の内奥から立ち上がる『声』に耳を澄ませて生きようとする」「一般的には、こうした発達段階は、人生の後半期において、自己の死を意識し始めることを契機として創発することになる。それまでの人生を通して獲得・創造してきた多くの物(成功・名誉・財産)が、最終的には、死の瞬間において全て奪い取られ、自らが塵に返っていくことを宿命づけられた存在であることを認識するときに芽生える」


「個々人の成長や発達とは、本質的に独自のものであり、その軌跡を把握するためのひとつの物差しが、発達理論が示す発達段階であるにすぎない」「発達理論は、他者を判定・分類するための道具ではなく、他者を効果的・効率的に支援するためのもの」


「段階的な成長においては、皮肉にも、現在の自身の欲求を最終的に否定することが求められる」「人間の発達とは、『死を拒絶』しようとする根源的な欲求に支えられたものであり、そして、一生を通じて創発していくそれぞれの発達段階は、そうした欲求をより効果的に満たすための『創造』と言える」「意識の拡張を通じて、それまで『存在』していなかったものを意識の中に存在させるというダイナミクスは、われわれの生涯にわたる成長や発達のプロセスを貫いていく」「発達が高次の段階に向かうプロセスの中では、それまでの人生の中で構築してきた人格構造と向き合い、それを今新たに創発しようとしている高次の構造の中に統合することが必要とされる」「垂直的な成長とは、水平的な成長では対処できない高い難易度の課題や問題と直面したときにやむにやまれずに起こるものである」「独自の才能が捉えた真実を明らかにするためにさまざまな探求を始める」「特定の『型』や『方法』や『技』の実践者として自己を規定するのではなく、一人の個として『どのような価値を創造する者として自己を成長・成熟させていくのか?』という問いと対峙することを通して、『意志』や『思考力』や『想像力』や『胆力』をはじめとする内的な探求と成長を支える重要能力を鍛錬することは、それに続く段階に向けた変容プロセスに飛び込むための貴重な準備作業」


「われわれの自己とは、われわれの言語の構造に大きく規定されることになる」「われわれは往々にして関係者の視点を十分に理解できていると錯覚してしまう傾向にある」「卓越した思考力は、あくまでも自らの主張や判断を正当化するために用いられる傾向にある」「私の幻日はあくまでも私が自らの意識の中に再構築した『現実』であり、それはこの時代に生きる他の人々が経験しているものとは異なる」


「組織のリーダー的な存在には、思想や構想を自らの思考や行動の中に体現することが求められるが、それに加えて、内外の関係者と効果的に意思疎通を支、その理解や共感を得ていくためには、異なる価値観や世界観の間を機動的に行き来する柔軟な意識が必要となる」「われわれの意識が高まり深化するほど、それが生み出す影は大きくなるということを、そして、現在の自己の限界を超克して高次の発達段階に向かうためには、影に意識を向けて、それを探求・統合し続けることが求められる」「『今』に意識を向けるとは、半ば無意識のうちに営まれている心の性癖を『妨害』する実践である」


発達段階として、アンバー、オレンジ、グリーン、ティール、ターコイズ、インディゴと挙げているのだが、ティールあたりから意味が取りづらくなり、インディゴにおいては全く理解できない。「『思考』という行為そのものが脱構築かされてしまうとき─そして、そうした行為を積み重ねることを通して確立されてきた、生きていくための指針や基盤そのものが溶解してしまうとき─われわれは果たしてどのようにして、そうした『虚無』を克服していくことができるのだろうか?という問いと格闘することを求められる」という言葉の意味は理解できるが、全く体感を伴わない。「世界の美しさは、既に与えられているのであり、それを認めるためにわれわれがしなければいけないことは何もない。われわれが為すべきことは、それを認めることだけ」と言われても、概念はともあれ、具体的にはチンプンカンプン。


「発達理論とは、まずは他者を他者として尊重しようとするところに成立する」「発達理論とは、人間の意識の質的な深化のプロセスを探求する営み」
「バランスのとれた人格的な成長・成熟を実現していくためには、真善美の3つの価値領域の全てを包容して、それぞれの領域が突きつけてくる問いと格闘し続ける必要がある」としつつ「『真』の領域は、『善』や『美』に比べて、総じて非常に明確であり、また、より広い範囲の人達に開かれている。同時に我々が注意すべきは、『真』の領域の価値(量の価値)が、まさにそうした突出した明確さゆえに、特権化されてしまい、質の論理が蔑ろにされる危険性がある」

【読了】デイヴ・アスプリー「超ライフハック」

今年120冊目読了。シリコンバレーのテクノロジー起業家、バイオハッカーにして、ブレットプルーフ360創業者兼CEOの筆者が、世界中の最新研究と膨大なデータをもとに最強テクニックを体系化した一冊。


生きるとは、どういうことか。「権力、お金、セックス。大抵の人間はミトコンドリアの命を受けて、これら3つの追求に一生を費やしている」「幸せになれることをしていればお金が入ってくるのであって、その逆ではない」「幸せになりたければ、いまあるもの、今置かれている状況に満足しなくてはならない」「称賛やお金を得るためのゲームから、喜びを噛み締めるためのゲームに変えていく」のあたりは、その読み解きのヒントになる。


人生を生きるうえでの基本的構造として「本能に支配されたエゴを克服して真の目的を追求すれば、成功がついてくる」「人生を楽しむためのハックは①もっと賢く:脳が最高のパフォーマンスに達しているときは、ほかのすべてが簡単にできる②もっと速く:身体活動の効率を向上させ、やるべきことを実行するための精神的・身体的エネルギーを与えてくれる③もっと幸せに:多くの人が瞑想や呼吸法を挙げ、それで平穏な心が保てる」「行動の優先順位づけと、自分の強みへの集中が、成功のための2大ツール」「超速学習法;FAST。F:Forget(忘れる)─空にしなければ入れられない。A:Active(能動的)─自ら創造する学習へ。S:State(状態)─脳と身体のコンディションを整える。T:Teach(教える)─教えることでわかることがある」「人のパフォーマンスを改善するには、情熱と行動のつながりに注意を払う」などと指摘する。


よい人生を送るためのポイントは「意志力とは筋肉のようなもので、訓練で強く出来るし、使いすぎれば疲れもする」「瞑想は信念を書き換える」「リスクを取らずにいることはあなたを弱くする」「時間、愛着、期待の3つの要因すべてが揃って、はじめて恐れが姿を現す」「他者を気遣える人の特性は、率直さ、思慮深さ、責任感、結果思考」「空腹以外で食べている時は、すべて感情にひきずられて食べている」「直接顔を合わせて行うコミュニケーションは、オキシトシン(※信頼ホルモン)の放出を最も刺激する」「同意できない何かに直面するときにこそ成長の機会が訪れる」などを挙げる。


よい人生を送るため、具体的に取り組むこととして「嫌な気持ちを吐き出したくなったり、不平不満が湧いてきたり、ネガティブな考えに支配されそうになったときは、5分間ありったけを吐き出し、生産的なモードに復帰する」「睡眠、充電、感謝、マインドフルネスに集中する」「筋力を強化して炎症と酸化ストレスを減少させる」「食事のポイントは①量を控え、何度も食べない②たんぱく質を取る③野菜を食べる④魚の油を摂取する」「大事なことは、①感謝をする②脳の配線を理解する③身体は自分に従ってくれないことを知る」「人生の目標を設置するには①経験したいこと②人間として成長したいこと③世界に貢献したいこと、あるいは自分の足跡を残したいこと、の分類を念頭において時間をかけて検討する」などが参考になる。


瞑想に際しては「何かを期待することをやめ、無心になってものごとが起こるに任せる」「瞑想は心と体のウェルネスを促進し、健康的な社会をつくるための改革を牽引する原動力になる」とし、大事なハックとして感謝を提言。「身体に『危険ではない、安全だ』と知らせる最高にして最善の方法は『感謝』すること」「あなたにできることは、感謝と赦しにつながるストーリーか、腹を立てつづけることになるストーリーか、いずれかを選ぶこと」「就寝前に何か感謝できることを思い浮かべるシンプルな儀式を行っていれば、ミトコンドリア酵素が増え、もっと幸せを感じられる」「自分の中にネガティブな感情があることを認め、そんな感情を引き起こした出来事や状況について、見方を変えれば自分に何らかの利益をもたらしてくれていないか、今日の自分を形成してくれていないかと考えて感謝し、ネガティブな気持ちを手放す」ことを強く薦める。


なかなか良書なのだが、和訳タイトルがいけてない。英語では「GAME CHANGERS What Leaders,Innovators,and Mavericks Do to Win at Life」。こっちのほうが、名は体を表す、となっている気がする。ま、面白い本だった。

【読了】岡崎大輔「『やり抜く子』と『投げ出す子』の習慣」

今年121冊目読了。和歌山に放課後スクールPETERSOXを立ち上げ「いつでも、どこでも、自分らしく輝ける社会をつくる」をビジョンに掲げ、現在までに10,000人以上の子どもと大人にライフスキル教育を提供している筆者が、子育てにあたってどのような習慣をつけさせればよいかを書き著した一冊。


子育てにあたっての前提として「自分をゴキゲンにすること以上に、大事なことはない」「自分の価値を決めるのは『失敗から学ぶ姿勢』『成長するための努力』『最高を作るための準備』」「起こった出来事に『良い』『悪い』はない。長い目で見れば、評価はころころ入れ替わるから。」と述べる。このあたりは、キャロル・S・ドゥエック「やればできるの法則」とシンクロする部分が多い。


また、子供の人生を幸せに導く「非認知能力」として「学校のテストでは測れない、目には見えない能力」があるとする。具体的には「①自分とつながる力:自分の感情や思考、強み弱みを理解し、自分を大事に思える能力②人とつながる力:周りの人と良い関係性を築く能力③夢を実現する力:自分が決めた目標を達成する能力④問題を解決する力:問題やトラブルを適切に対処する能力」であると説く。


基本の心構えとして「子供はやればできる、と心の底から信じきる。心配するのをやめて、信頼する」「改善点は、成長できるチャンス」「子供の人生に干渉しすぎず、失敗する機会を失わず、適度な距離間で見守る」と述べ、具体的に取るべき行動として
・子供の好奇心を育てるために
 →邪魔しない、焦らさない、求めない
・子供のやる気を育むために
 →子供のいいところを毎日3つ伝える
・自己決定力を高めるために
 →①邪魔しない、口出ししない、答えを教えない②選んだ理由を聞く③選択肢を与える
・子供の言い訳を問題解決に導くために
 →ステップ1)状況を聞く ステップ2)言い訳を受け止める ステップ3)解決策を問いかける
・子供にルールを守らせるために
 →ルールの目的を伝えたり、なんのためにルールがあるのかを考えさせる
・子供に片づけをさせるために
 →①スペースを分ける②3つのボックスで整理整頓③片付いた状態を体験する④クリーンアップタイムを設ける
・子供に目標を達成させるために
 →①期間を短く②100%達成できること③自分で決める
・子供を目標に向かって努力させるために
 →目標の目的を考えさせるべく「どんないいことがある?」と問いかける
・子供の聞く力を高めるために
 →①まず親が子供の話を聞く②具体的な行動を肯定語で伝える③聞くことで得する体験をさせる(誉める)
・子供に間違いを認めさせるために
 →①感情をフォローする②人格を否定しない③謝るポイントを確認する④誤った勇気を褒めてあげる⑤親が謝る姿を見せる


 というところを提示。どれもそれはそうなのだが、言うは易く、行うは難し…まぁ、子育てと言うのはそういうものなのかもしれない。わかりやすく、読みやすい良書だ。