世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】細谷功「自己矛盾劇場」

今年124冊目読了。ビジネスコンサルタント、著述したの筆者が、「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する一冊。


漫画やイラストが入って、とてもわかりやすく、読みやすい。かなり難解な「認知の限界」の話を、面白く理解できる。


自己矛盾の特徴を「①自ら気づくことはきわめて難しい(が、他人については気づきやすい)②気づいてしまうと、他人の気づいていない状態が滑稽でたまらない③他人から指摘されると、強烈な『自己弁護』が始まる」「抽象度の高低というメタ視点の有無と、情報量の多寡の両方が関わる」「主観が支配、近くから見る、矛盾だらけ、バイアスの塊」「本来、他者(という自分の外側)から表現されるべきことを自ら言ってしまう」と指摘する。


人間の陥る罠として「他人のことは一般化して見ることができるのに、自分のことはすべて特殊であるように思える」「抽象化によって個別事象を知的体系としてものにしてきたが、それが自己矛盾を起こす」「近くのものは特殊に見え、遠くのものは大くくりにしたがる(しかできない)」「自分が可愛いから自己矛盾に陥る」などを挙げる。


では、どうすれば良いか。「メタ視点で見ればたいして知識もないのに『知っている』と勘違いしない」「他人の言動が気になるとき、実はそれは自分のことではなかったかと考えてみる」「他人について具体的レベルで意見するのは無知の無知。抽象化した教訓を引き出す癖をつければ、抽象化のトレーニングになる」のあたりは、やるのは難しいが、故に取り組む価値がある。


自分が間違いだらけなのは、この本の自己矛盾事例を読むたびに痛感するが、「人間は失敗から学ぶことのほうが多いから、いちいち自己矛盾を気にしていたら生きていけない。『過去の自分と今の自分のダブルスタンダード』は成長の証」というコメントを救いにして、頑張るしかない。


参考になったのは「真似そのものは有益。問題はどのように真似をするか。具体性の高い真似はパクリ、抽象度の高い真似はアナロジーであり、抽象化思考やそれに対応する知の発展に大きな役割を果たしてきた」というところ。アイデアって、こういうことなのかもしれないな。