世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中井均「決定版 日本の城」

今年22冊目読了。城郭研究家にして滋賀県立大学教授の筆者が、名城の楽しみ方を網羅的に解説する一冊。


城郭検定の公式テキストに指定されているだけあって、非常に知識面で重厚な本。イラストや写真も多くて理解しやすく、読み物というより図鑑のような位置づけだな。


城の成り立ちについては「本来の城は、身を守るために築いた『軍事的な防御施設』。有事の際、人々は山に籠もり、敵の攻撃を防いだ。当初は山そのものが城だったのだ。やがて人工的な防御施設を持つ山城が出現し、戦国時代には居住空間も備えた巨大な山城へと発達していく」「もともと、山に城が築かれたのは、守りやすく攻め難いこと、もうひとつは眺望が良いこと」「山城の場合、山へ登らせないということが最大の防御」と述べる。


それが、時代を経て「信長、秀吉の時代に、城は軍事施設であるとともに、権威を『見せる城』という役割を付加された。また、御殿が築かれたことで、防御空間と居住空間が一体化することになった」となるのは、頭に入れておきたいところ。


筆者は、復元について「失われたものには失われた歴史があるのであり、その復元にこだわるよりも、現存する遺構を保存・活用すべきではないか」「軽はずみに復元建築を立てると、登城者に間違った知識を植え付ける怖れすらある」「往時の姿はイラストやCG、VRなどで楽しみ、それを参考に想像するのが、健全なあり方なのではないだろうか」という立場を取る。だが、本当にそうだろうか。古のやり方で建築・復元することの意義も、「技術継承」を含めて大事なのではなかろうか、と自分は考える。


余談ながら「眺望の確保は、城の役割や歴史を体感できる、大事な要素」は、確かにそうだなと思う。今は単なる雑木林でも、当時は綺麗に整備されていた山城はいくつもあるはず。