世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】金田章裕「景観からよむ日本の歴史」

今年93冊目読了。京都大学名誉教授にして、京都府立京都学・歴彩館長、京都府公立大学法人理事長の筆者が、景観のなかに人々の営みの軌跡を探る一冊。


観光に携わる者としてタイトルに惹かれて手にしてみたが、どうにも面白くない…これは外れだな。でも、まぁそういうこともある。


ただ、そんな中でも少し参考になる学びはあるわけで。


歴史的地図の変遷は「古代の地図は、土地を管理する。中世の地図は、境界を認識する。近世の地図は、町と村を描く」。
景観と風景は「もともと景観の語は、ドイツ語の『ラントシャフト』の訳語として使われ始めたのに対し、風景は、日本語として古くから使われてきた言葉」「風景の語は個人的な印象などを通した意味合いで使用されることが多い」「景観の語は通常、対象を客体として表現する際に使われる」「現在の日本では、目に見える地表の事物の集合体を表現している」のあたりはなるほどと思う。
また、「時間に直接かかわるのが、それぞれの景観要素の発生や形成、持続や変化、消滅ないし再生などの現象」「空間に直接関わるのが『文脈』であり、景観ないし景観要素相互の何らかの関係性」という時間と空間の切り分けも適切。


他方、鎌倉の起源には「頼朝による計画的な若宮大路建設があり、鶴岡八幡宮若宮大路を軸とする都市構想があったとみてよい」。秀吉は「御土居聚楽第・寺町などの建設によって、京都の都市構造を城下町のように改変した」。家康は「日本橋江戸城・城下建設計画の一つの拠点とし、江戸を全国の中心とする構想の起点」とした。というあたりはあまりにも当たり前すぎて…うーん。


筆者が触れている「各地を旅行で訪れる場合、おいしい食べ物を味わうことや、祭りなどの伝統的な行事を見物することが、大きな楽しみとなるのはもちろんであろう。しかしそれだけではなく、慣れ親しんだものとは異なる景観に接することもまた、楽しみの一つ」のくだりは間違いない。景観と観光の関係性は考えていきたいところだ。