世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】清田隆之「よかれと思ってやったのに」

今年13冊目読了。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の文筆家が、男たちの「失敗」の構造に迫る一冊。


筆者がいみじくも「自分の残念な部分が浮き彫りになって落ち込んでも、それが自分という人間の現在地なのだと認め、ここから出発するしかない」と言うとおり、男としては本当にダメージがでかい本。でも、故に向き合うしかないか…


男が小さな面倒を押しつける構造について「①小さな面倒を回避しようとする姿勢②他人事感と性別役割分業意識」「自分が楽になった分だけ相手の中にネガティブなポイントがたまっていく」は納得。さらに「イキる背景には『手軽に快感をゲットできる』という動機があるが、代償として『信用を食い潰す』」は、自分に自覚がなくても、いや、ないからこそ気をつけないと…


筆者は「いくら聞き手が『自分は話を聞いている』と思っていても、話し手のほうに『ちゃんと相手に話が届いた』という感覚が生まれない限り、それは話を聞いたことにならない」と指摘。相手の話をしっかり聞くためには「①話されている内容を論理的に読解する②想像力を働かせながら相手の感情に寄り添う③自分の言いたいことはいったん我慢し、口も挟まず、価値判断も下さない」はそのとおり。本当に自分は聞けていない…


男女の違いについての「男性は『思い通りにならない』ことが原因で不機嫌な態度を取ることが多いのに対し、女性は『思いが伝わらない』ことが不機嫌な態度の理由になることが多い」「女性は概ね、話し合いを『目の前の問題(あるいは潜在的な問題)について互いの意見を述べ合い、そのすりあわせを図る行為』と捉えていたが、男性は話し合いを『相手の機嫌をなだめるための行為』と考えている人が少なくない」も、肌感覚として理解できる。


では、どうすればよいのか。筆者の提案の中で「『やれる人がやる』の原則に立ち返り、自分がやるべきこと、人に頼ってもいいことをしっかり見定め、手間や面倒を誰かに押しつけていないか、そのつど、想像力を働かせていく」「真摯な謝罪とは『あなたと関係を続けていきたい』という意志を示すこと」「ともに生きていくためには調整やメンテナンスを逐一していかなければならない」のあたりは非常に心に刺さる。


そのほか、「感情体験とは『できごとに感応する身体的把握』と『社会的文脈に基づく言語的理解』のふたつが結びついて成立する」「変化を嫌うことは『豊かさへの無関心』」という指摘が鋭いと感じる。恋バナベースではあるものの、一般生活にも置き換えやすく、とにかく耳は痛いが世の男性たちは一読すべき一冊だ。テイストはとても軽いが、中身は重い…