世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中原淳「話し合いの作法」

今年26冊目読了。立教大学経営学部教授にして、立教大学経営学部リーダーシップ研究所 副所長の筆者が、「対話と決断」で成果を生むことを提唱する一冊。


中原淳先生のわかりやすく、しかも熱い筆致で理解が進む。


なぜ、話し合いが大事なのか。「話し合いは、多様な人々がこの世に生を受け、他の人々と『ともに』生きるための知恵」とし、「話し合いは、話し合いを自ら為すことの中で、経験から学ぶしかない」と問題提起する。
そして、日本では話し合いが苦手な理由を「①同質性の高い集団②ダメな話し合いを積み重ねている③正解主義に陥っている」と分析。これから話し合いが重要になる背景として「①我々はさらに『不正解な世界』を生きていくことになる②我々は『多様性』を乗り越える必要がある③われわれは『民主主義』を守っていかねばならない」と指摘する。


話し合いをするうえでの留意点を「心理的安全は、話し合いのための基礎的資源」「話し合いをする時は2つの意識の共有が大切。①今、『対話』と『決断』のどちらのフェイズで話し合いをしているのか②今日は『対話』だけで終わるのか、最後『決断』まで行くのか」と挙げ、問いの作り方については「①問いを開く②問いで解像度を上げる③問いと自己を関連させる」のが大事と述べる。
そのうえで、よい話し合いというものを「『私は~と感じる』を表出し合う『対話』からはじまり、『私たちは~したい』を決める『決断』に至るコミュニケーション。そして『決断』と、その後にある『実践(行動)』こそが『私たちの成果』を規定する」と定義する。


対話でもめないためのポイント8つとして
【1)前提:マインドセット】①対話とは『ケリのついていないテーマ』のもとでの話し合いである②対話とは『人が向き合って言葉を交わす風景』である③対話には『フラットな関係』がよく似合う
【2)行動】④対話では『自分』を持ち寄る⑤対話では『おたがいのズレ』を探り合う⑥対話とは『今、ここ』を生きることである
【3)成果】⑦対話では『自分を疑い、他者に気づく』⑧対話は『共通理解』をつくりあげる


そして、決断のルールとして
「①メリット・デメリットを明らかにする②多数決に安易に逃げるな③『誰が決めるか』を決める④『いつ決めるか』を決める⑤『どのように決めるか』を決める」


最後に述べられている「これからの社会を『言葉と論理が重視される世界』に変えるためには、話し合いの力が不可欠だ。それが本当の民主主義の実現であり、未来の日本を豊かにする有力な方法」から、中原淳先生の熱い思いを感じられる。


そして、「沈黙もまた『声』」「他者には他者の合理的な世界がある」「自分たちで決めたことには、自分たちで従う」のあたりも留意したいところ。


アラフィフのおっさんとしては、年齢や職位が上がると話が長くなる理由「①話す素材が増えてくる②権力への甘えがある③第三者からのフィードバックを受けにくくなる」は気をつけないとな…