世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】熊坂敏彦「循環型地場産業の創造」

今年79冊目読了。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員の筆者が、持続可能な地域・産業づくりに向けて、フィールドワーク、酒と器と旅を通して多様な地域、業種、人物を取り上げる一冊。


けっこう期待して読んでみたが、なんだか後付けで強引に整理しているだけのような感じで、あまり面白みがない。これもストーリーに絡め取られているからなのかもしれないが、やはり物事は物語がないと理解しづらいな…


筆者はサスティナビリティについて「持続可能な社会へ移行するには、パラダイムシフトが必要。①グローバルからローカルへの転換。②経済成長志向から豊かさ・成熟社会志向への転換。③台規模集中型社会システムから小規模分散型社会システムへの転換。④スピード社会・ファーストライフからスロー社会・スローライフへの転換」と主張。それを支えるのは地域だとして「地場産業で大事なのは①しっかりした技術があること②業界として横のつながりを持っていること③経営者が若いこと④従業員が10人以上であること⑤考え方に賛同・協力してくれること」「産地革新を支えるのは、コラボレーション、ネットワーク、地域ブランド、まちづくり、人材育成」と述べる。


観光の意義「観光は、地域内賃金循環構造の構築に大きく貢献する。①地域外から資金を獲得できる。②交流人口や関係人口を拡大し、定住人口拡大へのきっかけを作る。③地域のシンボルをつくって地域ブランド力を高めることができる。④地域内の諸産業を結びつけ、地域内の経済循環を高める。⑤イベントや祭りを通じて、地域コミュニティや地域文化の再生に貢献できる」「地場産業による『産業観光』は、①工場・工房見学②体験ツアー③イベント・お祭り④まちあるき、の4つに類型化できる」も、特に目新しさは感じない。


筆者は大きな視点のように「統合型地域産業政策の『統合』は、①中央政府と地方政府の政策の統合②産業政策と地域政策の統合③ものづくり・まちづくり・ひとづくりの三位一体的な政策体系④持続可能な地域・産業作りと関連諸政策との政策連携⑤地域諸産業の連携による統合」と述べるが、けっこうハードルが高いし、その処方箋もなくしたり顔で語られても…と共感できない


唯一賛同できるのは「海外で有名になるほうが日本でも早く浸透し、国内への売り込みにも結びつく『黒船効果』を狙う」という指摘。もはや内側思考ではダメだということは共感する。